今日から「在留期間」で手数料が変わった
2026年10月1日、外国人の在留手続に関する手数料制度が大きく変わりました。
在留資格変更許可や在留期間更新許可について、これまでのほぼ一律の手数料から、許可される在留期間によって手数料が変わる仕組みになったのです。
窓口申請の場合、例えば在留期間が1年なら33,000円、3年以上5年未満なら64,000円、5年以上なら75,000円となります。オンライン申請については窓口申請よりも低い金額が設定されており、例えば1年なら27,000円、3年以上5年未満なら56,000円、5年以上なら65,000円です。
つまり、同じ在留資格変更や在留期間更新であっても、最終的にどの在留期間が付与されるか、そして窓口申請かオンライン申請かによって、本人が負担する手数料が大きく変わる制度になりました。
私は行政書士として日常的に在留手続に携わっています。そして制度が始まったまさに今日、入管の相談窓口で、ある質問をしました。
「経済的な事情から、入管が付与しようとしている在留期間よりも短い期間を、本人が選択することはできますか?」
5年をもらえるなら、誰でも5年が欲しいのか
例えば、在留期間更新許可申請の審査の結果、入管が5年の在留期間を認めたとします。
通常であれば、それは申請人にとって喜ばしいことでしょう。
しかし、すべての外国人にとって、今この瞬間に窓口申請で75,000円、オンライン申請で65,000円という金額を支払うことが容易だとは限りません。
子どもの学費が必要な人もいるでしょう。家計が急に厳しくなった人もいるでしょう。失業や収入減に直面した人もいるでしょう。母国の家族に急な送金が必要になった人もいるかもしれません。
そのような人が、「5年を認めていただけることはありがたい。しかし、今この金額を支払うのは厳しい。今回は1年で構わないので、より低い手数料を支払って1年の在留期間を受け取りたい」と考えることは、本当にそんなにおかしなことでしょうか。
入管で尋ねてみた
私は今日、この問題について、入管で異なる3人の方に尋ねました。
しかし、返ってきた回答の趣旨は、いずれもほぼ同じでした。
「自分でその期間を希望して申請したのだから、付与された期間から変えられるわけがない」「そもそも、そんなことを希望する人がいるのか」――私には、そのようなニュアンスに聞こえました。
私は、この対応に強い憤りを感じました。
もちろん、制度上「できない」という結論になること自体を批判しているのではありません。
法令上、制度上できないのであれば、その根拠を示したうえで「できない」と回答していただければよいのです。
私が問題だと感じたのは、なぜこのような質問が生じるのかという背景に目を向けず、「そんなことを考える人がいるのか」という発想で、質問そのものを奇異なものとして扱う姿勢です。
「自分で5年を希望したのだから自己責任」なのか
もちろん、これに対しては一つの反論が考えられます。
「本人が申請時に5年を希望したのだから、5年が許可されたのであれば、その手数料を支払うのは本人の責任ではないか」という考え方です。
一見すると、もっともなようにも思えます。
しかし、人の生活状況は、申請した日のまま止まっているわけではありません。
在留期間更新許可や在留資格変更許可には審査期間があります。その間に、勤務先の状況が変わることも、収入が減ることも、家族に予想外の支出が発生することもあります。
申請した時点では5年を希望し、その手数料を負担できると考えていたとしても、審査が終わるまでの間に経済的事情が変化する人は当然います。
制度を考えるとき、「申請時に希望したのだから自己責任」という一言だけで、こうした現実を切り捨ててよいのでしょうか。
そもそも、何年になるかは審査が終わるまで分からない
さらに重要な点があります。
申請人が5年を希望したからといって、必ず5年が付与されるわけではありません。
5年を希望しても、審査の結果として3年や1年となることがあります。
最終的にどの在留期間が付与されるのかは、申請時には確定していません。
今回の制度では、その最終的に付与される在留期間によって手数料が変わります。
つまり申請人は、申請時点では、自分が最終的にいくら支払うことになるのかを確定的には知ることができません。
審査が完了し、許可に関する新しい通知を確認して、初めて最終的な在留期間と、それに対応する手数料が分かることになります。
これは今回の問題を考えるうえで非常に重要です。
自分が最終的に購入するものと価格を最初から理解したうえで選択しているのとは違います。行政の審査によって在留期間が決まり、その結果として負担すべき手数料も決まる仕組みなのです。
昨日までと今日からでは、前提が違う
昨日までであれば、「長い期間をもらえるなら、それを希望するのが当然だ」という感覚にも一定の理由があったのかもしれません。
これまで、「長い在留期間が認められること」は、基本的に外国人本人にとって有利なことでした。
1年より3年、3年より5年。長い期間をもらえるのであれば、通常、それを断る理由はありませんでした。
しかし、今日、2026年10月1日から、その前提は変わったのです。
在留期間によって、支払わなければならない手数料が大きく変わる制度になったからです。
窓口申請なら、1年33,000円に対して5年以上は75,000円。その差は42,000円です。
オンライン申請は窓口より低く設定されていますが、それでも1年27,000円に対して5年以上は65,000円で、38,000円の差があります。
「長い在留期間=本人にとって常に利益」という従来の常識は、もはや無条件には成り立ちません。
在留期間を決めるのは、最終的には行政である
5年の在留期間には、長期間安心して日本で生活できるという大きな利益があります。一方で、それに対応する高い手数料を負担することになります。
1年であれば在留の安定性は低くなりますが、手数料の負担は低くなります。
どちらを望むかは、その人の収入、家族構成、生活状況、将来計画、そして許可を受ける時点での経済状態によって違って当然ではないでしょうか。
しかも重要なのは、在留期間を最終的に決定するのは申請人ではなく、行政だということです。
申請人は希望する在留期間を書くことはできます。しかし、その希望どおりの期間が認められることが保証されているわけではありません。
つまり今回の制度によって、行政庁が審査を経て決定する在留期間が、そのまま本人が負担する手数料の額を大きく左右する構造になりました。
それならば当然、「本人はその期間を受け入れるしかないのか」「経済的事情から、より短い期間を選択することはできないのか」という疑問が生じます。
「33,000円なら払える。でも75,000円は厳しい」という人
出入国在留管理庁は、経済的困難その他の特別な理由がある一定の人について、手数料の減額・免除制度も設けています。
これは重要な制度です。
しかし、世の中には、減額・免除の対象となるほどの困窮状態にはないものの、「33,000円なら何とか払える。しかし75,000円を一度に払うのは厳しい」という人が当然いるはずです。
オンライン申請を利用すれば多少負担を抑えることはできます。それでも、5年以上の許可であれば65,000円です。
そして、オンライン申請を利用できることと、その金額を負担できることは別の問題です。
そういう人は、どうすればよいのでしょうか。
「払うか、許可を受けないか」の二択でよいのか
私が今日聞きたかったことは、突き詰めれば非常に単純です。
「長い在留期間を認められた人が、その手数料を負担することが難しくなった場合、より短い在留期間を選択する余地は本当にないのか」
申請時には支払えると思っていた。しかし、その後に事情が変わった。
あるいは、そもそも申請時点では、最終的に何年の在留期間が認められ、いくらの手数料になるのか確定していなかった。
それでも、いったん審査によって長い期間が決定されたら、その金額を支払う以外に選択肢はないのでしょうか。
もし本当に選択できないのであれば、さらに重要な問いが生じます。
「行政が決定した在留期間に対応する手数料を支払うか、それとも許可を受けないか。その二者択一しか認めない制度でよいのか」
これは単なる「手数料を安くしてほしい」という話ではありません。
行政が決定する在留期間と本人が負担する金額を連動させた以上、その決定に本人の意思や、許可時点における経済的事情をどこまで反映させるのかという制度設計の問題です。
少なくとも、公開された説明からは答えが見えない
出入国在留管理庁の公式案内では、許可を受ける在留期間に応じて手数料額が異なることや、窓口申請とオンライン申請で手数料額が異なることなどが案内されています。
しかし、私が本日確認した公開情報の範囲では、「審査で決定された在留期間より短い期間を本人が希望した場合、それを選択できるのか」について明確に説明した記載を確認することはできませんでした。
制度が始まった初日だからこそ、このような疑問が出てくるのは当然です。
そして、現場から出てきた疑問を「そんな人がいるのか」で終わらせるのではなく、制度を所管する行政機関には正面から考えていただきたいと思います。
外国人にも、それぞれの生活がある
75,000円という金額を、「払えて当然」と考えてはいけないと思います。
外国人も日本で家賃を払い、食費を払い、税金や社会保険料を払い、子どもを育て、家族を支えながら生活しています。
そして生活は変化します。
申請した日の経済状態と、数か月後に許可を受ける日の経済状態が同じだという保証はありません。
その人にとって数万円の差がどれほど大きなものなのか。それは行政の側からは見えないかもしれません。
しかし、見えないからといって、存在しないわけではありません。
制度は、「普通なら長い期間を欲しがるだろう」「自分で希望したのだから払うだろう」という行政側の想定だけで運用されるべきではありません。
人には、それぞれの生活があり、それぞれの事情があります。そして、その事情は申請してから許可されるまでの間にも変わります。
「そんな人はいないだろう」で終わらせてはいけない
私は今日、入管で質問をして、非常に不愉快な思いをしました。
しかし同時に、この経験によって、今回の制度改正が抱える重要な問題の一つが見えたように思います。
在留期間によって手数料に大きな差を設けるのであれば、在留期間についての本人の意思を制度上どう位置付けるのか。
申請時から許可時までの間に本人の経済的事情が変化した場合、それをどう考えるのか。
申請時には最終的な在留期間も手数料額も確定していない中で、行政が長い在留期間を認めたとき、その高額な手数料を負担することが難しい人に、どのような選択肢を用意するのか。
そして、その問いを発した人に対して、「そんな人がいるのか」という発想で向き合う行政であってよいのか。
今日、2026年10月1日は、新しい在留手数料制度の初日です。
制度は今日始まったばかりです。だからこそ、運用上の問題が見つかれば、今から考えればよいのです。
私は行政書士として、この問題を単なる窓口での不愉快な出来事として終わらせたくありません。
「そんな人はいないだろう」ではなく、「もしそのような人がいたら、この制度はその人にどう向き合うのか」。
その問いを、私は広く投げかけたいと思います。
参考情報
出入国在留管理庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」
https://www.moj.go.jp/isa/01_00644.html
出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-3.html
出入国在留管理庁「令和8年10月1日以降における在留許可手数料の減額措置又は免除措置について」
https://www.moj.go.jp/isa/10_00273.html
※本稿は、2026年10月1日時点で公表されている情報および筆者が同日に入管の相談窓口で行った照会をもとに、制度の運用について問題提起するものです。