以下、長文となります。報道からは明らかになっていないイラン国内の状況、通常では経験できない在留資格関連の経験値について、本投稿から得られる部分も多いかと思われます。学校関係者以外の方も是非最後までお読み頂けますと幸甚です。
お願いの内容
受入が内定している外国人留学生については、通常、学校側が一括して在留資格認定証明書交付申請を行っていらっしゃると存じます。
今回ご紹介するイラン国籍の外国人1名については、特別に、小職(申請取次行政書士)が、特急にて、申請取次をさせて頂く前提で、入学手続を進めることにご同意いただける、日本語学校の関係者のかたはいらっしゃいませんか?
発信者(私)の紹介
私は、申請取次行政書士の西山健二と申します。外国人の在留諸申請を主たる業務として行っています。詳しくは、弊事務所ホームページをご覧ください。
これまでの経緯
最初のコンタクト
事務所への連絡
3月17日(火)、通院中に事務所スタッフから「イランに残された息子さん(以下A)を日本に一刻も早く呼び寄せたいがどうすればよいか」という電話が、日本人の女性(以下Bさん)あったので折り返し電話せよ、との連絡がありました。
どの在留資格で呼ぶべきか
事務所スタッフから電話を受けた時点では、在留資格「日本人の配偶者等」で、その日のうちにオンラインにて在留資格認定証明書交付申請を行う提案をしようと、Bさんに電話をしました。
しかし、実際にお話ししたところ、Aは、イラン国籍のご主人の実子であるということがわかりました。「日本人の配偶者等」とは”日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者”です。Aは実子ではないので、当該在留資格は該当しません。
いわゆる「連れ子」を対象とした、在留資格「定住者」の一類型がありますが、こちらは18歳未満である必要があります。Aは20代ですので対象外です。
したがって、Aは、「留学」もしくは就労系の在留資格で日本での上陸許可を目指すこととなります。
Bさんとの話の中で、これからとるべきアプローチは、「まずは命の危険があるので、一刻も早く「短期滞在(※1)」で来日させ、日本語学校の選定、入学手続きをすすめながら、「在留資格認定証明書(COE)交付申請」を実施、COEが交付されたら、日本で「短期滞在」から「留学」への「在留資格変更許可申請」(※2)を行う作戦で進めることで合意しました。
※1 イラン国籍の方の査証について
イランは、短期滞在ビザの査証免除国ではありません。(正確には免除国だが措置停止中、経緯については当ブログ過去記事参照)ですので、Aはテヘランの在イラン大使館で短期滞在査証を取得する必要があり、後述のように命がけの行動に出ることになります。)
※2 短期滞在からの在留資格変更許可申請について
原則として「短期滞在」からの在留資格変更許可申請は受理されません。入管にて「やむを得ない事情にある」場合と判断された場合において、受理、許可へと進む場合があります。本ケースでは、元々「留学」を希望しているAが、「短期滞在」を終えていったん戦下にあるイランに帰国すれば、再び日本に戻ってくることは困難であろうと予測でき、このことが「やむを得ない事情にある」と判断いただけるだろうと考えました。
依頼人家庭の現状
ご夫婦は関東地方のある県にお住まいです。Bさんのご主人は、日本語が流暢でないため、家計は主にBさんが支えています。Bさんのお仕事は多忙で日中、当件に費やせる時間が非常に限られています。Bさんのご主人も、日本での手続は不得手であるので、本件に時間を割ける余裕が全くといっていいほどありません。息子さんの命の危険に関わる話でも、いったん仕事をおざなりにすることの生活基盤が崩れる事へのリスクなど、私のような無知な人間からは推し量ることのできない、制約があるのだということを、思い知らされています。
以降の時系列
3/17 火(日本基準:以下同じ))
テヘランの在イラン日本大使館に複数回架電、通じないので日本の外務省緊急電話対応窓口に架電、現在、在イラン日本大使館は査証受付停止中だが、緊急の場合は受け付けているので、現地大使館に問い合わせて欲しいとの回答を受ける。
隣国、トルコ、アンカラの在トルコ日本大使館に架電(※3)。トルコに避難した場合、イラン人の査証申請を受け付けてくれるか聞いたところそれは不可との回答
※3 査証の第三国申請
基本的に、各国の日本大使館では、管轄する国に居住する人のみ、査証発給申請を受け付けます。(短期滞在でも、COEを伴った中長期在留も)今回は緊急事態(イランで査証受付停止中)であるので、イラン人によるトルコでの申請(第三国申請)を受け付けてくれないかという打診でしたが、断られました。
3/20 金
AにWhatsAppでコンタクトを試み、約7時間後返信あり。
私:どこにいるか、海外からは通じないが、日本の大使館にコンタクト可能か?日本への航空券は入手可能か?
A:爆撃(実母が負傷)があったテヘランの実家近くから80km離れた郊外に避難中。生活状況は非常に厳しく、電話、インターネットはたまに繋がる程度、ただ車があるので、タイミングによっては日本の大使館にいける。航空券はトルコにいけば入手可能。
私:上記に述べたこれからの計画(短期滞在>留学)を説明し、合意
~しばらく連絡が途絶える~
3/29 日
Aから電話あり。
A:避難していた場所からエスファハーンに移動したがすぐに移動する。常に爆撃がある。日本大使館に電話がつながらないので実際に行ってみたが閉まっていた。
A:(約2時間後)今日本大使館に再び来てみた。中にだれかいるようだが、アポがないため、セキュリティが中に入れてくれない。
日本の外務省の緊急窓口に電話
私:今、A(身分を説明)が日本大使館の前にいるが入れてくれないようだ。本人は緊急として査証申請を受付けてくれるかのみ聞きたい。危険下で命を賭して来ているので入れてやってくれないか。
外務省:現地は日本人優先で対応している。在イラン日本大使館は、月水金の10-11時に窓口、平日13時-17時で電話対応しているので、申し訳ないが、この時間で対応して欲しい。
再びAから電話があったので、上記を伝える。
A:一晩テヘランで過ごし、日本大使館に行ってみる。それでだめであれば、トルコに向かう。
3/30 月
短期滞在査証申請のための書類を、在イラン大使館にメールし、本日本人があらわれるので、緊急として、査証申請を受理、可能であれば発給までしてほしい旨伝える。
Aから電話あり
A:日本大使館に入って事情をはなした。私からのメールは届いているが、受け付けられないと言われた。これから、トルコ、イスタンブールに向かう(3日かかる)。トルコにイラン人はビザなしで入国できるが、90日が最大でありこれを超えるとイランに帰らなければならない。
その後、在イラン日本大使館から私に上記メールの返信として「現在、緊急の場合の査証受付は停止している。長期滞在を希望される場合はCOEをとってください」との回答あり。
さらなる返信として「本人はイスタンブールに向かったが、COEがあったとしても通常は認められない第三国申請は可能か」と質問
在イラン日本大使館から回答、「現在イスタンブール領事館ではイラン人によるCOEに基づく査証発給申請は受け付けています」とのこと。
4/1
Aから国境を越えトルコの街に入った旨の連絡あり。(ここからはWhatsAppが途切れることなく通信可能となる)
現在のプラン
短期滞在での来日が閉ざされた今、「留学」の在留資格認定証明書交付申請を行う予定です。Aはもともと日本の日本語学校で学ぶことを計画していました。(現在N5の合格証明書をもっています。)
さて、現在の必達目標は、
- 在留資格認定証明書(COE)交付申請をすみやかに行い、
- 可能な限り短期間でCOEを交付いただき、
- 速やかにCOEをもってイスタンブール日本領事館で査証発給申請を行い、査証を受け取ることで、
- Aのトルコでの在留期限が到達する前に日本に向け出国する
ことにあります。
ここから、冒頭のお願い部分の核心となります。
外国人留学生の受入を認められている日本語学校関係者の皆様は、出入国管理法を厳格に遵守することが求められており、そのため、いったん受け入れ枠が満たされ、受入学生の全員が確定してから初めて、在留資格認定証明書交付申請手続に入られるものと思います。(申請主体は、日本語学校が「代理人」となる)申請人となる外国人は、個別対応により不許可事案となることを避ける目的からも、一括して申請されることが通常です。
10月開講コースであれば、大体6月頃がその開始タイミングかと思われます。COEは9月に交付されるものと思われます。
しかしながら、ご説明したとおりAの場合は、トルコでの在留期限が到来する前の6月中(査証発給の期間等も考えると6月初め)にはCOEを取得しておく必要があります。
このため、小職に、Aの在留資格認定証明書交付申請を行わせて頂きたい、というのが、心からのお願いになります。
実は、通常は、10月開講の日本語学校コースのために、6月の入国を予定したCOEの発行は認められません。7-9月の活動に在留資格該当性がないためです。しかし、事の緊急性から、留学準備活動として特別な配慮を、申請時お願いするつもりです。
もちろん、例えば7月開講コース、或いは欠員による早期受入といったお話があればこれに越した選択肢はありません。
最後に
報道の多くは軍事施設、或いはその周辺への攻撃・誤爆が主ですが、Aからの連絡(WhatsAppと直電)によれば、町中への爆撃も凄まじいらしく、元々の自宅のすぐそばの状況がインスタグラムの動画で公開されているので見て欲しいとのメッセージがありました。(動画はこちらです。→https://www.instagram.com/reel/DWO0E-hAf78/?igsh=bGl3YWQ3ZGhxd3Y1)
トルコでの滞在は90日であり、この期間が終わると戦禍厳しいイランへの帰国を余儀なくされます。
同様の状況に置かれた人々も数えきれないほど多くいると思われ、難民となられる方々もいるでしょう。
Aは、日本人の実子ではないものの、事実上、日本人の母親をもった、日本と縁浅からぬ人物であり、従来から、日本での就学、就労を夢見てきた若者です。Bさんとは、毎日電話でやり取りしていますが、少し話せば泣いていることがわかり、実子同様の愛情を感じます。
(因みに私は、昨年10月に発症した脳梗塞のリハビリ中です。後遺症に”感情失禁”というものがあり、少しのことで号泣してしまうのであえて事務的に接しています。Bさん、ごめんなさい。)
私としては縁を頂いた以上、Aを、何とかして、日本で、彼及び家族の希望を叶えさせたいのです。
本投稿をご覧になった日本語学校関係者の方ら一人でもご連絡を頂けることを祈っております。
ご連絡は、090-5787-1206、kenjin@ngj.jp まで。心よりお待ちしております。