PHPの脆弱性対応から始まった、思いがけない発見
このところ、事務所で運用しているWebサーバの整備に時間を費やしていた。PHPの脆弱性への対応、古い実行環境の更新、そして長く眠っていたサーバの刷新である。セキュリティ対策とシステムの安定稼働を目的とした、どちらかといえば地味な作業であった。
ところが、複数のサーバやWebサイトの構成を見直し、それぞれの役割を整理しているうちに、あることに気付いた。
いつの間にか、私が提供したいと考えていたサービスが、ひととおり形になっていたのである。
在留申請の取次から始まり、特定技能の申請支援、登録支援機関向けのITサービス、外国人材の学習支援、オンラインコミュニケーション、情報提供、そして外国人政策に関する研究まで。
それぞれは個別の課題に対応するために作ってきたものだが、改めて並べてみると、一つの方向を向いている。
そこで今回、これらの取り組みを一枚にまとめた、新しい「にしやま行政書士事務所」の事務所案内を制作した。日本語版と英語版を用意し、A4サイズの印刷物としても、InstagramなどのSNSでも紹介できる構成とした。

在留申請を、もっと迅速に、正確に、身近に
私の仕事の出発点は、もちろん行政書士としての在留申請業務である。
外国人本人や受入れ企業にとって、在留手続は生活や事業の継続を左右する重要な手続である。一方で、必要書類の準備や申請内容の確認には多くの時間と負担がかかる。
そこで、在留申請APIの活用、独自の申請テンプレート、電子契約などを組み合わせ、手続の効率化を進めてきた。特定技能についても、申請書類の作成を支援する仕組みを整備している。
目指しているのは、単に申請をデジタル化することではない。
定型的な作業を減らすことで、行政書士が本来注力すべき事実関係の確認、法令適合性の判断、申請内容の説明に、より多くの時間を使えるようにすることである。
迅速さ、正確さ、そして利用しやすい価格を両立させること。 それが、技術を活用する目的である。
STREAMO――在留資格の取得から、その先の学びへ
今回、サービス全体を整理する中で、特に大きな位置を占めるようになったのが、外国人材向けのマイクロラーニングプラットフォーム「STREAMO」である。
在留資格を取得することは、日本での生活や就労の出発点であって、ゴールではない。特に特定技能外国人にとって、日本語能力の向上や特定技能2号への移行は、将来の選択肢を広げる重要な課題である。
STREAMOは、こうした学習を日常生活の中に組み込むための動画学習サイトである。日本語能力試験JLPT N3や特定技能2号の分野別評価試験への対策を中心に、短時間の動画と確認問題を組み合わせた学習環境を提供する。
一度に長時間勉強することを求めるのではなく、1日5分からでも学習を継続できることを重視している。
スマートフォンで短い動画を視聴し、問題に取り組み、少しずつ理解を深める。学習内容も、試験のための知識だけにとどまらず、日本の職場で実際に使われる言葉や、仕事の現場で必要となる判断力につながるものを目指している。
在留申請の支援から、在留資格取得後の能力形成へ。
これまで手続を中心としていた事務所のサービスに、教育という新しい柱が加わったことは、私にとって大きな意味を持っている。
登録支援機関の活動をITで支える
外国人材の受入れを支えているのは、行政書士だけではない。登録支援機関や受入れ企業による日常的な支援が不可欠である。
しかし、小規模な支援機関が独自のITシステムを開発・維持することは容易ではない。
そこで、登録支援機関向けのWebサイト開設・運用サービスを用意した。独自Webサイトの運用に加え、STREAMOのようなマイクロラーニングの仕組みを組み込むことで、情報発信と外国人材の育成を一体的に支援する。
また、「uchikam.com」は、登録支援機関が外国人材との定期面談や緊急面談に利用するためのWebRTCコミュニケーションツールである。
行政書士自身がオンライン相談を行うためだけのものではなく、登録支援機関の日常的な支援業務を支えるための仕組みとして開発したものである。
在留申請の現場で感じてきた不便や負担を、制度の理解と技術の両面から改善する。行政書士事務所がITサービスを提供する理由は、まさにそこにある。
情報を届けることも、外国人支援の一部である
事務所のホームページでは、日本国内の入管・在留関連ニュースだけでなく、世界各国の移民・難民関連ニュースも継続的に紹介している。また、制度改正や外国人政策について、独自の視点からコラムを発信している。
外国人をめぐる制度は、国内だけで完結するものではない。労働力の国際移動、送り出し国の事情、受入れ国の政策、社会統合の問題など、さまざまな要素が関係している。
海外の動向を知ることは、日本の制度を相対的に理解することにもつながる。
さらに、「在留外国人の便利マップ」では、外国人の暮らしに役立つ施設やサービスを地図から探せる仕組みを提供している。
情報が存在していても、必要な人に届かなければ意味がない。情報へのアクセスを改善することも、重要な支援の一つである。
すべての取り組みの根底にある「均衡共生モデル」
これらの実務的なサービスとは別に、私は外国人政策のあり方について「均衡共生モデル(Balanced Coexistence Model)」を提唱し、研究と発信を続けている。
外国人の受入れを、単なる労働力の確保や在留管理の問題として捉えるのではなく、外国人本人、受入れ企業、地域社会、行政の間にある権利、義務、利益、負担をどのように調整するかという視点から考えるものである。
在留申請の効率化、学習機会の提供、登録支援機関のIT支援、生活情報へのアクセス改善。
これらは一見すると別々のサービスだが、均衡共生モデルが重視する、制度への信頼、情報の透明性、当事者の能力形成、そして持続可能な受入れ環境という課題につながっている。
理論を論じるだけでなく、実務の中で小さくても具体的な仕組みを作る。反対に、実務で生じた課題を政策研究に還元する。その往復を大切にしたいと考えている。
一つひとつ作ってきたものが、一つのサービス体系になった
振り返れば、最初から大きなサービスパッケージを設計していたわけではない。
在留申請をもっと効率化できないか。登録支援機関の負担を減らせないか。外国人材が無理なく学習を続ける方法はないか。必要な情報をもっと探しやすくできないか。
その時々に感じた課題に、一つずつ取り組んできた結果である。
今回のサーバ刷新は、それらを整理するよい機会になった。古い環境を更新し、セキュリティと安定性を見直す作業を通じて、個々のシステムだけでなく、事務所が提供できる価値の全体像を見直すことができた。
もちろん、すべてが完成したという意味ではない。STREAMOの学習コンテンツの充実、サービス間の連携、使いやすさの改善など、取り組むべきことはまだ多い。
それでも、在留申請、教育、IT、情報提供、政策研究をつなぐための基盤が、ようやく出揃ったと感じている。
新しい事務所案内に込めた思い
新しい事務所案内には、「在留申請を、もっと早く、正確に、もっと身近に。」というメッセージを掲げた。
これは在留申請だけに限った言葉ではない。複雑な制度や手続を、必要とする人にとってもっとわかりやすく、利用しやすいものにしたいという思いである。
小さな行政書士事務所であるからこそ、現場の課題を直接受け止め、自分で仕組みを考え、改善を重ねることができる。
行政書士としての専門性とITを組み合わせ、外国人本人、受入れ企業、登録支援機関のそれぞれに役立つサービスを提供していきたい。
今回制作した事務所案内は、日本語版と英語版の2種類である。これを機に、これまで個別に紹介してきたサービスのつながりを、より多くの方に知っていただければ幸いである。
在留申請 × 教育 × IT。
その組み合わせを通じて、外国人と日本社会の持続可能な共生に、これからも実務の立場から取り組んでいきたい。
にしやま行政書士事務所
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