<技能実習制度の趣旨と実態>
厳しい職場環境に置かれた技能実習生の失踪が相次ぎ、人権侵害の指摘があるとして、令和5年11月30日、政府の有識者会議は今の制度を廃止するとした最終報告書を法務大臣に提出しました。
技能実習の目的は”国際貢献”であり、日本において職能(知識と経験)を取得した外国人の方々が、自国に戻って活躍することにより、その国々の発展に寄与するということが本来の趣旨ですが、実態としては日本の労働力不足を解消するための制度となっています。
<見直しの方向性>
報告書には、”現行の技能実習制度を発展的に解消し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度を創設”とあり、この矛盾を取り払うと同時に、「現代の奴隷制度」と悪名高い制度となってしまった原因でもある、転籍制限を緩和する人権上の配慮が主眼と見て取れます。(現在の制度では原則として3年間は勤務先を変えることができませんが、これを条件付きで1年とするとしています。)
<新制度案の課題>
人権上の配慮は当然のことと思いますが、これに伴う課題は、地方からの人材流出です。技能実習、特定技能の両制度により受け入れている外国人人材、彼ら無くして経営が成り立たなくなっている企業・団体は、特に労働力不足に悩まされる地方に顕著にみられるようになっています。
多くの手間と大金を投下して苦労して受け入れた人材が、すぐ転籍してしまうのはやっていられない、というわけです。
なお、在留資格「特定技能」には基本的に転籍の自由が認められていますが、在留申請取次を業務として行っている行政書士の間でも同様の課題がよく指摘されます。
人材流出を食い止めるための取組で成功している事例(地方の外国人材流出を止める秘策は…「都会体験」? 技能実習後も9割以上が働くJAの狙いとは)もありますが、制度としてこの課題を解決することが必要であると考えます。高い賃金、都会の刺激等、若い人材が都会で働くことを志向することは当然のことです。
例えば、地方と都会の賃金格差を補助金として支給する等のことは考えられないでしょうか。
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