はじめに
先進国の中で日本の難民認定率が著しく低いことへの批判に対し、そもそも難民申請をする人の大多数が難民条約上の難民にあたらず、難民認定申請手続が濫用されているというのが出入国在留管理庁側の見解です。
条約上の難民の定義は「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるもの」です。
申請者がこの定義にあたるかどうかは、つまるところ、外交上の忖度から判断されるのだろう、ということを当ブログで述べました。
すなわち、例えばトルコでクルド人の弾圧が実際に起こっていたとしても、トルコ政府が問題の解決にあたっているのであれば、そこを無視して難民認定すると、トルコ政府に失礼、トルコ政府を無能と宣言してしまうことになる。一方、アフガニスタン国内では迫害が行われているが、政府はこれをとりしまる能力に欠け、国際的にもそう認知されているので、難民認定します、という理屈です。
難民認定制度を悪用して入国する外国人は多く、私は、出入国在留管理庁の見解はもっともなことだと思っています。(認定率が低いことをもって、人権を軽視しているとはいえない)
「誠実な」申請者はいる
一方で、難民認定制度を悪用する気は毛頭ない「誠実な」人々も確実にいます。難民認定されるかどうかは、外交上の忖度からくる理屈で決まるため、本当に保護が必要な人々に保護が与えられないケースが多々あります。(ちなみに、難民にあたらずとも、補完的保護者として、或いは人道的配慮から在留資格が与えられることがあります。)
例えば、A国内で民族内で対立があり、母国に帰れば別の民族から殺されることを恐れている難民認定申請者がいます。
そもそも、彼らは、難民認定申請、不認定後の審査請求等の場面において、日本語が話せないため、まともな主張ができていません。
たとえまともな主張ができたとしても、入管庁が発表する、難民認定、補完的保護者認定、或いは人道的配慮から保護すべき者として在留資格が与えられるケースには、いずれも当たらないものです。
A国は、日本国政府が迫害が行われていると宣言するような国ではないことから難民認定はされず、紛争が行われているわけではないので補完的保護者にもあたらず、ニュースになるような武力闘争が行われていたり、日本人と結婚するなどの特別な事情があるわけでもないので人道的配慮から保護するべき対象にも当たりそうにないのです。
しかしながら、帰国すれば殺される可能性は確実にあるわけです。殺されるかもしれないのに、どれだけ資料を具体的に立証しても、”虚偽でないとは言い切れない”という理由で却下されるわけです。
ただ、何度も言いますが、私は、この運用自体が理不尽であるとは思っていません。私が言いたいことは他のことです。
難民認定申請する人がとる通常のパターン
難民認定申請中の人には、特定活動(難民認定申請中:6か月)(通称)という在留資格が与えられます。
難民認定申請する人々のパターンは、通常、以下のようなものです。
- 短期滞在で入国
- 難民認定申請(初回)
- 難民認定申請が不認定となり審査請求
- 在留資格変更(短期滞在から特定活動(難民認定申請中))
- (6か月経過)
- 在留期間更新1回目(特定活動(難民認定申請中))
- 審査請求結果(理由なし=不許可)
- 難民認定申請(2回め)(不認定となり審査請求)
- 在留期間更新2回め以降、可能な限り在留期間更新
- 審査請求結果(理由なし=不許可)
- 在留期限前に帰国(或いは期限を超え不法残留>収容)
「誠実な」申請者がとるべき道とは
本来、特定活動(難民認定申請中)という在留資格は、日本で出稼ぎするために難民申請制度を悪用するためのものでなく、あくまで母国に帰れば命の危険がある事を証拠をもって主張し、保護を求めている状態を指します。そして後者を「誠実な」申請者と呼ぶこととします。
就労を目指せ
「誠実な」申請者は就労を目指すべきです。そしてその具体的な方法は、「特定技能1号」を取得することです。
特定技能1号には、技能実習ルートと試験ルートがあることを、当ブログの記事で述べました。同記事では、試験ルートで費やすべき学習時間、日本での受験頻度を述べています。
試験ルートで必要とされる時間は500~1000時間です。1日8時間勉強すれば、60日~120日程度、2か月から4か月程度で合格ラインに乗ることができます。
上記、”難民認定申請する人々のパターン”で述べた、日本に在留できるトータル期間は、少なくとも6か月、通常その何倍の期間にもなるわけで、勉強の時間は十分にあるはずです。
検討すべきステップ
”難民認定申請する人々のパターン”を、”難民認定申請をしているが保護が与えられないことを見越して就労資格を得て自己実現を目指すパターン”に進化させたステップは以下のとおりです。
- 短期滞在で入国
- 難民認定申請(初回)
- 難民認定申請が不認定となり審査請求
- 在留資格変更(短期滞在から特定活動(難民認定申請中))
- 特定技能1号の試験勉強を始める
- 特定技能1号の試験合格
- 特定技能所属機関(求人を出している会社)の求人に応募する。(SNS等で情報は出回っています。)
- 特定技能所属機関と雇用契約を結ぶ
- 在留資格変更許可申請(特定活動(難民認定申請中)から特定技能1号へ)
- 特定技能1号への在留資格変更許可が出て、晴れて日本で就労(更新を重ね最大5年滞在、特定技能2号に移行すれば、更新の上限なく事実上の永住が可能)
まとめ
特定活動(難民認定申請中)も、難民認定で保護が認められた場合に与えられる「定住者」も、あくまで保護を与えるべきという観点から認められる在留資格です。しかし、その人が「誠実な」申請者であり、庇護を求める国として日本を選び、心身ともに健康であるならば、日本で「働く」ことを望むでしょう。
「誠実な」申請者は、不安な状態でただ結果を待つのではなく、「働く」ための勉強をすべきですし、そのことが希望につながるはずです。