【山形】自動車整備工場で働くベトナム人2人 難関試験合格(2025-06-16 山形新聞)の記事を以下に要約します。

山形県酒田市の自動車整備工場で働くベトナム出身のグエン・スアン・フーンさん(34歳)とチュー・バン・ドゥオックさん(29歳)が、合格率約30%の難関「自動車整備分野特定技能2号」の試験に合格しました。2人は技能実習生として5年前に来日し、日々の努力が実を結びました。

この資格により在留期間の制限がなくなり、家族の帯同も可能になります。2024年末時点でこの資格を持つ外国人は全国で3人のみで、山形県内では初めてです。

2人の働きぶりは職場でも高く評価されており、店長も「店を支える中心的存在」と称賛。人口減少と労働力不足が課題の地域で、今後の活躍が期待されています。

2人は「家族のため、酒田で長く暮らしたい」と語り、さらなる努力を誓っています。

制度の背景と意義

日本の少子高齢化に伴う人手不足の深刻化を背景に、2019年に創設された「特定技能制度」は、一定の専門性・技能を有する外国人材の就労を認める新たな在留資格制度です。その中でも「特定技能2号」は、より熟練した技能を有し、在留期間の上限がなく、家族帯同も可能という点で、外国人材の中長期的な定住を見据えた重要な制度と位置づけられています。

特定技能2号の制度概要

  • 対象者:特定技能1号として一定の実務経験を積み、かつ2号の技能評価試験や技能検定(1級・単一等級)に合格した者。
  • 特徴
    • 在留期間の更新に上限なし(永住許可申請の対象にもなりうる)。
    • 配偶者・子の帯同が認められる。
    • 分野は2023年に大幅拡大され、現在では16分野が対象。

合格実績の推移(〜2025年)

制度当初、特定技能2号の対象分野は建設と造船・舶用工業に限定されていたこともあり、合格者数は極めて少ない状況が続きました。

  • 2021年末:わずか1名。
  • 2022年末:10数名。
  • 2023年末210人(出入国在留管理庁発表)。
  • 2024年6月末153人(新規取得者ベース。累計では約400人規模と推定)。

2024年には、対象分野として「素形材産業」「電気・電子情報関連産業」「自動車整備」「飲食料品製造」などが加わり、2号資格の選択肢が一気に広がりました。実際、木材産業では試験実施初回で受験者20名全員が合格するなど、新規分野での合格実績も見られています。

分野別の動向

  • 建設分野:取得者最多。技能検定制度の運用が進んでおり、試験制度が整っている。
  • 造船・舶用工業:溶接や塗装など、高度技能職種が中心。技能実習からの移行が多い。
  • 製造業系(素形材・電気電子・自動車整備など):2024年以降急拡大中。今後の主要分野に。
  • 新規分野(宿泊、外食など):制度設計中または試験準備段階のため取得者はこれから。

合格への要件と試験制度

特定技能2号への移行には、以下の条件をクリアする必要があります。

  • 特定技能1号での実務経験(通常2年以上)を有すること。
  • 分野ごとの技能検定(1級または単一等級)の合格、もしくは特定技能2号評価試験の合格。
  • 日本語能力については要件が明示されていないが、実務上はN3相当以上が望ましい。

また、2025年からは、評価試験がアジア15か国(フィリピン、ミャンマー、ベトナム、インドネシア等)で順次実施され、試験機会の拡充が進んでいます。

制度上の課題と合格者拡大へのボトルネック

特定技能2号の実績が伸び悩んできた理由としては、以下のような制度的・運用的課題が指摘されています。

① 試験機会の不足と地域偏在

  • 2号試験の実施回数が少なく、地域も限定的で、外国人にとって受験しにくい環境。
  • 試験告知も限定的であり、企業や本人が情報にアクセスしづらい。

② 曖昧なスキル評価の基準

  • 熟練技能の定義があいまいな分野もあり、評価が厳格になりすぎる傾向。
  • 分野によっては試験制度が整備されておらず、移行が困難。

③ 企業の理解不足と申請支援体制の弱さ

  • 多くの中小企業では2号の制度がよく理解されておらず、移行を支援できていない。
  • 登録支援機関や行政書士などのサポート体制にも地域差があり、対応力にばらつき。

今後の支援体制と制度の充実に向けた動き

① 試験の拡充・オンライン化の加速

  • 分野ごとに試験のオンライン受験や多言語対応が進められており、2025年には複数分野で実現予定。
  • アジア各国における受験機会の平準化も目指されている。

② 特定技能1号から2号への移行支援の強化

  • 技能実習・特定技能1号からのスムーズな移行を図るため、各分野で移行モデルケースの策定が進行中。
  • 各国政府との連携による現地支援体制の整備(例:現地日本語学校・技術研修センターとの連携)。

③ 地方自治体と企業支援の強化

  • 一部の地方自治体では、外国人材定着支援や企業説明会、試験対策講座などを開催。
  • 地域を挙げて「長く働いてもらえる環境づくり」への取り組みが広がっている。

結論と展望

特定技能2号は、日本の産業現場で長期的に活躍できる外国人材の育成・定着を促す制度であり、特定技能1号と異なり、将来的な「準永住資格」としての意味合いを持ちます。

2025年には試験制度の整備、支援体制の強化、そして対象分野のさらなる拡大が進められ、年間で数千人規模の合格者・移行者が見込まれています。制度のさらなる成熟が期待される今、企業、自治体、国が連携し、外国人材が安心して日本で暮らし、働ける社会基盤の整備が求められます。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。