「ベトナム人4人を使用の会社社長を入管難民法違反で逮捕、不法就労助長とは」(2024/10/02 企業法務ナビ) の記事によれば、”不法就労助長罪は、過失の場合も含まれ、不法就労に当たらないよう慎重に確認した場合でなければ違法となります。外国人を雇用している場合は、これらに問題がないか今一度チェックしなおしておくことが重要と言えるでしょう。” とのこと。

在留カードが就労可能であることを示していること、又、カード自体が偽造したものでないことを確認(スマートフォンやPCでチェックできるアプリが入管庁より配布されています。)することは基本の基ですが、従業員となる外国人に守ってもらう必要があることは多々あります。

これらを約束してもらうため、入社時に署名済誓約書を提出してもらうことをアドバイスしています。本投稿では、幣事務所が提供している誓約書テンプレート(一例)をご紹介します。

就労系在留資格の誓約書テンプレート

全体

誓約書弊事務所が提供しているテンプレートは左記のような1枚ものです。

詳説入管法と外国人労務管理・監査の実務第3版 山脇康嗣 新日本法規 P143 を参考とし、カスタマイズしています。

在留資格・在留期間の変更を速やかに把握すること

入社時に在留カードを確認していても、その後、様々な事情で、在留資格や在留期間の変更が発生した場合は、その事実を速やかに把握しておく必要があります。(例えば、雇用主の知らないところで、入社前に許可なく資格外活動を行っていたことが発覚し、在留資格を取り消されているかもしれません。)これらの事象が無いか常にチェックをする義務が求められますが、これらは従業員の方から申告してもらわなければ、履行することはできません。誓約書の下記条項はこのことを約束してもらうものです。

  1. 出入国在留管理局から在留資格の変更を受けた時(在留資格「特定活動」にあっては、法務大臣による活動の指定内容が変更されたときを含む。)は、貴社に対し、当該変更後の在留資格(在留資格「特定活動」にあっては、法務大臣による活動の指定内容を含む。)及び付与された在留期間を、旅券の写し及び在留カードの写しを添付して速やかに通知すること
  2. 出入国在留管理局から在留期間の更新許可を受けた時は、貴社に対し、その旨及び付与された在留期間を、旅券の写し及び在留カードの写しを添付して速やかに通知すること
  3. 出入国在留管理局から在留期間の取消処分を受けた時は、貴社に対し、その旨を、旅券の写し及び在留カードの写しを添付して直ちに通知すること
  4. 出入国在留管理局から収容令書発付処分又は退去強制令書発付処分を受けた時は、貴社に対し、その旨を直ちに通知すること
  5. 上記4及び5の場合の他、在留資格を喪失したときは、貴社に対し、その旨を、旅券の写しを添付して直ちに通知すること

在留カード原本の確認

既に述べたとおり、採用時において在留カード原本を確認することは、雇用主に最低限要求される事項です。(外国人にとって初めての就労先である場合は、雇用主が在留資格認定証明書交付申請の代理人となっているケースが殆どであるため、在留カードが偽造であるケースはあまり想像できませんが、新しい転職先として受け入れる際は要注意です。

ただ、採用時のみならず、雇用主が知ることなく、在留資格や在留期間に変更が発生していることがあります。このことを察知するため、雇用主は常に従業員の在留カード原本を確認することができる状態にしておく必要があります。下記の条項はこのことを担保するためのものです。

  1. 在留カードの真正性を確認し、貴社による雇用が違法な就労とならないか否かを判断するために必要であるとして貴社が求めた場合には、貴社に在留カードの原本を提示すること

(許可なく)資格外活動をさせない

女性従業員が、業務時間外の夜に、飲食店でアルバイトをしていた事が発覚するようなケースがあります。雇用主が知らなかったことは勿論、入管に資格外活動許可の申請もしていなかったケースです。この場合、従業員に資格外活動罪が成立するだけでなく、雇用主側に不法就労助長罪が成立する可能性があります。従業員が隠れて行う場合に、これを防ぐことは簡単ではないですが、すくなくとも誓約書に下記のような条項を加えておくことは、過失が無かったことを証明するために有益です。

  1. 貴社における就労以外の資格外活動については、貴社及び出入国在留管理局からの許可なくして、絶対にこれを行わないこと

在留カードの不携行はそれだけで罪

この点は不法就労助長罪とは関係ありませんが、在留カードの不携行は、それだけで、20万円以下の罰金または1年以下の懲役を課される可能性があるとともに、次回の在留期間更新が困難となり得ます。「うっかり」ミスが深刻な結果をもたらす可能性がありますので、下記のような条項で注意を喚起しておきます。

  1. 自らの在留カードは常にこれを携行すること

所属機関に関する届出

こちらも不法就労助長罪とは関係ありませんが、転職や会社の住所等に変更があった場合は、外国人の方が自らその変更を入管庁に届け出る必要があります。

例えば、日本に既にいる外国人を、自社があらたな転職先として受け入れ、従前の会社を辞めたことを届けなかった場合、次回の在留期間更新申請の際に、本当は3年間の在留期間を取得したかったのに、1年しか許可されないというようなことがあります。

このことの注意喚起が、下記の諸条項になります。

  1. 従前に日本の会社を退職し貴社と新たに雇用契約を締結した場合は、従前の会社を退職したこと、また、新しく御社と雇用契約を締結したことについて、所属機関に関する届出を定められた期限内に出入国管理局に提出すること
  2. 前項の場合において、期限が超過していたとしても、これを速やかに行うこと
  3. 貴社を退職し、他社と新たに雇用契約を締結することとなった場合は、貴社を退職すること、また、新しく御社と雇用契約を締結することについて、所属機関に関する届出を定められた期限内に出入国管理局に提出すること

まとめ

不法就労助長罪は、従業員の不法就労を”知らないことに過失が無かった”場合は、免れます。つまり”知らないことに過失が無かった”ことを証明するための最低限の措置が雇用主に求められるということです。

この措置として、採用時点での在留カードの確認と誓約書の回収は是非行って頂きたいと思います。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。