「日本語能力試験、アジアで受験進む 10年で倍に」(2024/09/19 オルタナ)とのこと。日本語能力試験(JLPT)は、日本語を母語としない人々を対象に、日本語の知識とコミュニケーション能力を測るための試験です。試験は5つのレベル(N1からN5)に分かれており、N1が最も難しく、N5が最も易しいレベルです。それぞれのレベルは、「文字・語彙」「文法・読解」「聴解」など、日本語のさまざまな側面に基づいて評価されます。以下では、N1からN5までの基準について、具体的な例を挙げながらわかりやすく説明します。
N1: 最も難易度の高いレベル
N1は日本語能力試験の中で最も高度なレベルで、日本の大学や企業で必要とされる日本語力を持つことを示します。高度な語彙や複雑な文法、難解な文書の読解力、ニュースや講義の聴解力が求められます。
具体的な基準
– 語彙・漢字: 多くの専門的な語彙や難しい漢字が含まれます。新聞、学術論文、専門書などに出てくる表現を理解し、使いこなすことが求められます。例えば、「概念(がいねん)」「継続(けいぞく)」「履行(りこう)」などの漢語や、「随時(ずいじ)」「漠然(ばくぜん)」といった日常ではあまり使わない難解な表現も含まれます。
– 文法・読解: 長く複雑な文や、多様な文型の組み合わせを理解できることが求められます。文学作品や論説文など、主張や意見の背景を理解するための高度な読解力が必要です。例えば、「〜にもかかわらず」「〜とはいえ」などの逆接の表現や、「〜せざるを得ない」「〜といえども」などの硬い表現を理解し、適切に使えることが期待されます。
– 聴解: テレビニュースやビジネス会議、講義の内容を理解し、要点を把握する能力が求められます。話し手の意図や感情、複雑な内容の論理的な流れを聞き取ることが必要です。スピードが速く、専門的な話題や複数の話者によるディスカッションなども含まれます。
達成目安
N1に合格するには、約2,000時間以上の学習が必要とされることが一般的です。また、語彙は約10,000語以上、漢字は2,000字以上の知識が必要とされています。
N2: 実践的なビジネスレベル
N2は、ビジネスや大学での一般的なコミュニケーションに十分対応できるレベルです。N1ほど高度ではありませんが、日常会話からビジネス文書まで、幅広い日本語を理解し、使いこなす能力が求められます。
具体的な基準
– 語彙・漢字: 新聞や雑誌、ビジネス文書に出てくる語彙や漢字を理解し、使えることが求められます。例えば、「開発(かいはつ)」「供給(きょうきゅう)」「実施(じっし)」などのビジネス用語や、「際立つ(きわだつ)」「承知(しょうち)」といった一般的な表現を使いこなすことが期待されます。
– 文法・読解: 比較的長い文章や論説文、小説を理解できる能力が必要です。新聞の記事やビジネス文書、説明文などの文脈を把握し、筆者の主張を読み取ることが求められます。文法的には、「〜わけではない」「〜一方で」「〜にもかかわらず」などの複雑な表現や、敬語表現の正確な使用が求められます。
– 聴解: ニュースやビジネス会話、大学の講義など、少し専門的な内容や速いスピードの会話を理解できることが求められます。話し手の意図や感情を正確に聞き取り、要点をまとめることが重要です。
達成目安
N2に合格するためには、約1,200〜1,800時間の学習が必要とされています。語彙は約6,000語、漢字は約1,000字程度の知識が必要です。
N3: 日常会話から一般的な場面での対応力
N3は、中級レベルであり、日常的な状況や少し専門的な会話に対応できる力を示します。日常生活でよく使われる語彙や表現、ある程度の長さの文章を理解する能力が必要です。
具体的な基準
– 語彙・漢字: 日常会話や一般的な文章に出てくる語彙や漢字を理解し、使えることが求められます。例えば、「情報(じょうほう)」「予定(よてい)」「感想(かんそう)」といった比較的基本的な語彙や、「訪ねる(たずねる)」「表現(ひょうげん)」などの表現を理解することが求められます。
– 文法・読解: 簡単な論説文や日常生活に関連する内容の文章を読解できる能力が求められます。「〜ようにする」「〜ことにする」などの文法的な表現を使いこなし、内容の理解に基づいて適切に対話ができることが期待されます。
– 聴解: 日常会話や少し複雑な内容の会話を理解する力が必要です。会話の要点を聞き取り、情報を正確に理解する能力が求められます。速度や内容がやや速いニュースやインタビューの内容を理解できることが目標です。
達成目安
N3に合格するためには、約600〜1,000時間の学習が必要です。語彙は約3,500語、漢字は約650字程度の知識が求められます。
N4: 基本的な日常会話の理解
N4は、初級から中級にかけてのレベルで、基本的な日常会話や文章を理解し、簡単な表現でコミュニケーションができる力を示します。
具体的な基準
– 語彙・漢字: 日常生活に頻繁に出てくる語彙や漢字を理解し、使えることが求められます。例えば、「家族(かぞく)」「趣味(しゅみ)」「病気(びょうき)」といった基本的な語彙を使いこなすことが期待されます。
– 文法・読解: 簡単な文章や日常的な出来事に関する短い文章を理解できる力が必要です。「〜てもいいです」「〜なければならない」などの基本的な文型を使って、自分の意思や状況を説明できることが求められます。
– 聴解: ゆっくりと話される日常会話や、身近な話題についての簡単な説明を理解できることが必要です。簡単な質問に答えたり、指示を聞いて行動したりできるレベルです。
達成目安
N4に合格するためには、約300〜600時間の学習が必要とされています。語彙は約1,500語、漢字は約300字程度の知識が求められます。
N5: 最も基本的な日本語の理解
N5は、日本語能力試験の中で最も初歩的なレベルで、日本語学習を始めたばかりの人々を対象としています。簡単な日本語の表現や基礎的な語彙・漢字を理解する力が求められます。
具体的な基準
– 語彙・漢字: 日常生活でよく使われる基本的な語彙や漢字を理解し、使えることが求められます。例えば、「学校(がっこう)」「先生(せんせい)」「友達(ともだち)」といった初歩的な語彙や、「行く」「来る」「食べる」といった基本的な動詞を理解できることが必要です。
– 文法・読解: 簡単な挨拶や日常的な表現を理解し、短い文を読んで内容を把握できることが求められます。例えば、「〜は〜です」「〜があります」などの基本的な文型を使い、自己紹介や簡単な質問に答えられるレベルです。
– 聴解: ゆっくりと話される簡単な会話や指示を理解できることが必要です。基本的な日常会話を聞き取り、簡単な質問に答えられることが期待されます。
達成目安
N5に合格するためには、約150〜300時間の学習が必要です。語彙は約800語、漢字は約100字程度の知識が求められます。
まとめ
日本語能力試験のN1からN5までの各レベルは、学習者の日本語理解力に応じて設けられています。N1は高度な日本語力を必要とし、ビジネスや学術的な内容を理解できることが求められます。一方、N5は日本語学習の初歩段階で、日常生活で使われる基本的な語彙や表現を理解するレベルです。学習者は、自分の日本語能力や目的に合わせて適切なレベルの試験を選ぶことで、日本語力の向上を測ることができます。