「自分の国もあと15年遅れで高齢社会に突入するんです。日本よりもっと早い勢いで高齢化しています。ただ遅れて始まっただけなんですね。そうすると、おそらく皆さん賢い方々なので、いずれは母国に帰って起業するとか、日本で起きていることが母国でも起こるので、そこで自分が活躍したい。そういう先を見ているだろうと思う」(宮城の介護を支える外国人 インドネシアの若者に介護業が人気の理由とは?(2024/09/20 宮城放送))

アジアの多くの国々は、経済発展や医療技術の向上、生活水準の改善に伴い、平均寿命が延び、出生率が低下する傾向が見られます。その結果、少子高齢化が進行し、将来的に日本に次いで高齢化社会を迎える国々が増えてきています。以下では、アジア諸国の中で特に高齢化の進行が顕著で、今後高齢化社会の到来が見込まれる国々について、具体的な事例とその背景を詳しく述べます。

1. 中国

高齢化の現状と予測

中国は、アジアの中でも日本に次いで高齢化が急速に進んでいる国です。国家統計局によると、2020年時点で中国の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は約13.5%で、総人口の増加が鈍化する中で、今後も急速に増加する見込みです。さらに、中国の総人口が14億人を超えることから、高齢者の絶対数も非常に大きく、2035年には高齢者人口が4億人を超えると予測されています。

背景と課題

中国の高齢化の進行には、長年にわたる「一人っ子政策」と、急速な経済発展に伴う医療技術の向上が大きく影響しています。一人っ子政策は、人口増加を抑制することに成功しましたが、出生率の低下を招き、結果として若年層の人口が減少しています。その一方で、平均寿命の延びにより高齢者人口が増加し、人口の年齢構造が急速に変化しています。

中国では、家族が高齢者の介護を担う伝統的な家族観が根強いものの、都市部への人口移動や核家族化が進む中、家庭内での介護が難しくなってきています。高齢者福祉の整備が遅れているため、将来的には日本と同様に介護施設の不足や社会保障制度の持続可能性といった問題に直面することが予想されます。

2. 韓国

高齢化の現状と予測

韓国もアジアの中で急速に高齢化が進む国の一つです。韓国統計庁によれば、2021年時点で65歳以上の人口は総人口の16.5%に達しており、2025年には20%を超え、超高齢社会に突入すると予測されています。韓国の高齢化スピードは非常に速く、少子化と平均寿命の延びが同時に進行している点が特徴です。

背景と課題

韓国では、1970年代以降の経済成長とともに医療や生活環境が改善し、平均寿命が大幅に伸びました。しかし、急速な経済発展と都市化の影響で、出生率が大きく低下しています。2018年には、韓国の合計特殊出生率は世界最低レベルの0.98を記録し、若年人口の減少が顕著となっています。

韓国においては、日本と同様に家族のつながりを重視する文化が根付いていますが、現代では共働き家庭が増加し、家庭内での高齢者のケアが困難になっています。政府は高齢者福祉政策や年金制度の充実に取り組んでいますが、高齢者福祉のための財源確保、労働力不足への対応、介護人材の育成など、多くの課題に直面しています。

3. シンガポール

高齢化の現状と予測

シンガポールもアジアにおいて高齢化が進んでいる国の一つで、2020年時点で総人口に占める65歳以上の割合は約15.2%でした。今後、2030年までにこの割合は25%を超え、4人に1人が高齢者となる見込みです。シンガポールは、出生率の低下と平均寿命の延びにより、急速に高齢化が進んでいます。

背景と課題

シンガポールの高齢化の背景には、高い経済発展と都市化、教育水準の向上などが挙げられます。これらの要因により、女性の社会進出が進み、晩婚化や少子化が進行しています。シンガポールの出生率は1.1を下回っており、若年人口の減少が顕著です。

政府は、高齢化に対応するために、介護保険制度や高齢者向けの住居政策、医療サービスの充実など、包括的な高齢者福祉政策を実施しています。しかし、高齢者の増加に伴う医療費や年金の負担増、労働力不足への対応策を講じる必要があります。特に、介護サービスの充実と介護人材の育成は大きな課題となっています。

4. タイ

高齢化の現状と予測

タイは東南アジア諸国の中で、特に高齢化の進行が顕著な国の一つです。2020年時点で、65歳以上の人口は総人口の約13%に達しており、2025年には20%を超えると予測されています。タイは経済成長に伴い、平均寿命が延びる一方で、出生率の低下が進んでおり、高齢化のスピードが増しています。

背景と課題

タイの高齢化の背景には、経済発展による医療や衛生環境の改善、都市化の進展が挙げられます。特に、都市部では女性の社会進出が進み、晩婚化や少子化が進行しています。また、核家族化が進む中で、伝統的に家族が高齢者を介護する文化が変化しつつあります。

タイ政府は、高齢者福祉の拡充や年金制度の整備、介護人材の育成に取り組んでいますが、社会保障制度の未整備や財源確保の問題、医療・介護サービスの不足など、多くの課題を抱えています。特に、地方部では介護施設の不足が深刻であり、今後の高齢者ケアのための体制整備が求められています。

5. ベトナム

高齢化の現状と予測

ベトナムも急速に高齢化が進む国として注目されています。2020年時点で、65歳以上の人口は全人口の約8%にとどまっていましたが、2030年には14%を超え、2040年には20%に達すると予測されています。ベトナムは、東南アジア諸国の中で比較的若い人口構成を持っていましたが、近年の経済発展に伴い高齢化が急速に進んでいます。

背景と課題

ベトナムの高齢化の背景には、経済発展と医療技術の向上、そして人口抑制政策が影響しています。1980年代以降、出生率の抑制政策が導入され、出生率の低下が進みました。一方で、医療環境の改善により平均寿命が延び、結果として高齢者人口が増加しています。

ベトナムでは伝統的に家族が高齢者のケアを担う文化が根付いていますが、都市部を中心に核家族化が進んでおり、今後の高齢者ケアのあり方が大きな課題となっています。政府は、高齢者福祉政策の整備や年金制度の改革、介護人材の育成に注力していますが、日本のように成熟した介護サービスや施設の体制が整っておらず、今後の高齢者ケアのための基盤構築が急務です。

まとめ

以上のように、アジアでは中国、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムといった国々が、日本に次いで高齢化社会を迎えると予測されています。これらの国々は、それぞれ異なる背景や文化を持ちつつも、少子高齢化や高齢者ケアの課題に直面しています。今後は、日本の経験を参考にしながら、社会保障制度の整備、介護人材の育成、医療・介護サービスの充実など、各国が自国に適した高齢者福祉政策を構築していく必要があります。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。