2024/08/30 日本経済新聞の記事によれば、法務省は、中長期で日本にいる外国人の在留カードとマイナンバーカードを一体化した「特定在留カード」の導入に82億円を要求したとのこと。

在留カードをマイナンバーカード(以下、マイナカード)と一体化することのメリットは多岐にわたります。この一体化は、日本に住む外国人の利便性を向上させるとともに、行政手続きの効率化や情報管理の一元化を促進します。以下では、在留カードとマイナカードを一体化することによってもたらされる具体的なメリットを、行政効率の向上、セキュリティの強化、利用者の利便性の向上、情報管理の一元化の観点から詳述します。

1. 行政効率の向上

在留カードとマイナカードの一体化は、行政手続きの効率化に大きく寄与します。現在、外国人は日本で生活する上で複数の身分証明書を所持しなければなりません。在留カードとマイナカードの二つのカードを持つ必要があることで、外国人が様々な手続きを行う際に手間がかかり、また、役所側もこれらのカードを別々に管理する必要があります。しかし、一体化することで手続きが簡略化され、時間とコストが削減されると期待されます。

具体的には、外国人住民の行政サービス利用時に、窓口での身分確認手続きがスムーズになります。これにより、役所の窓口での待ち時間が短縮され、職員の業務効率が向上します。さらに、カードの一体化により、行政機関が利用するシステムの簡素化やデータ管理の効率化も可能となります。このような効果は、行政機関にとって大きなコスト削減に繋がるでしょう。

2. セキュリティの強化

次に、在留カードとマイナカードの一体化によるセキュリティ面の強化について述べます。マイナカードは、高度なICチップを搭載しており、不正使用を防ぐための複数のセキュリティ対策が施されています。一方、在留カードも同様の機能を持ち合わせていますが、これらのカードを別々に管理する場合、紛失や盗難のリスクが増える可能性があります。

一体化することで、これらのリスクを軽減することが可能です。例えば、カードの紛失時には一つのカードのみを無効にすれば良いため、手続きが簡素化されるだけでなく、不正使用のリスクも減少します。また、ICチップを用いた情報管理により、偽造や改ざんのリスクが低減され、デジタル署名などの先端技術を利用することでセキュリティがさらに強化されます。

さらに、一体化したカードは、オンラインでの認証にも使用できるため、本人確認を必要とする各種サービス(例えば銀行口座の開設や、携帯電話契約の申込など)において、より安全かつ簡便に手続きを行うことが可能になります。これにより、外国人住民のプライバシー保護や、個人情報の漏洩リスクが大幅に低減されることが期待されます。

3. 利用者の利便性の向上

在留カードとマイナカードの一体化は、利用者である外国人にとっても大きなメリットをもたらします。一体化されたカードは、日常生活における様々な場面での身分証明書として利用可能です。例えば、銀行や郵便局での手続き、役所での各種申請、レンタルショップでの会員登録など、カード一枚で対応できるようになります。これにより、外国人は複数のカードを持ち歩く必要がなくなり、利便性が大幅に向上します。

また、一体化することで、カードを紛失した場合の再発行手続きも簡素化されます。現在、在留カードとマイナカードの両方を紛失した場合、それぞれのカードの再発行手続きを別々に行う必要がありますが、一体化されたカードであれば、再発行手続きも一度で済むため、利用者の手間が大幅に減少します。

さらに、マイナカードが提供するさまざまなデジタルサービス(例えば、マイナポータルを通じたオンライン手続きや、健康保険証としての利用など)を、外国人も一体化カードを通じて利用できるようになるため、外国人住民の生活の質も向上するでしょう。これにより、外国人が日本社会により容易に適応し、社会参加を促進することにもつながります。

4. 情報管理の一元化

情報管理の一元化も、一体化の大きなメリットの一つです。現在、在留カードの情報とマイナンバー情報は別々に管理されており、それぞれの情報の更新や管理には手間とコストがかかります。一体化することで、これらの情報を一元的に管理できるようになり、情報の更新が効率化されるだけでなく、データの整合性も保たれるようになります。

また、情報の一元化は、行政サービスの質を向上させるだけでなく、データの活用範囲を広げることも可能にします。例えば、行政機関が保有するデータを効率的に共有することで、より迅速で的確な政策立案や施策の実施が可能となります。さらに、外国人住民の属性情報が一元的に管理されることで、災害時の迅速な対応や支援が行いやすくなり、外国人住民の安全確保にも寄与します。

結論

在留カードとマイナカードの一体化は、行政の効率化、セキュリティの強化、利用者の利便性の向上、情報管理の一元化といった多くのメリットをもたらします。これにより、日本に住む外国人がより安心して生活できる環境が整備されるだけでなく、行政コストの削減や社会全体の効率化にも貢献するでしょう。このような理由から、在留カードとマイナカードの一体化は、今後の日本社会において重要な取り組みの一つであるといえます。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。