ハフポスト日本版(2024/09/01)から、レイシャル・プロファイリングとゼノフォビアに関する記事が出ています。

レイシャル・プロファイリングは、特定の人種や国籍に基づいて個人を識別し、取り締まりや監視の対象とする行為を指します。これは、特に警察や入国管理当局、公共の場でのセキュリティチェックなどにおいて行われることが多いとされます。レイシャル・プロファイリングは、人種差別やゼノフォビア(外国人嫌悪)と深く関連しており、外国人や特定の民族グループが日本社会で経験する差別や排除の一部となっています。本稿では、日本におけるレイシャル・プロファイリングの具体的な実例を挙げ、その背景にあるゼノフォビアとの関連性について詳述します。

1. 日本におけるレイシャル・プロファイリングの実例

(1) 入国管理およびビザ管理における事例

日本の入国管理局や空港の入国審査において、外国人に対するレイシャル・プロファイリングが報告されています。特定の国籍や人種の外国人が、通常よりも厳格なチェックを受けることが多く、ビザの審査でも「疑わしい」と見なされるケースが多いです。例えば、特定の東南アジア諸国やアフリカ諸国出身の旅行者が、頻繁に追加の質問や所持品検査を受けたり、長時間拘束されたりすることが多いという報告があります。

これには、日本政府が国境管理や治安維持の一環として、不法滞在者や犯罪者の入国を防止するために外国人に対する取り締まりを強化している背景があります。しかし、この取り締まりが特定の人種や国籍に偏っていることから、差別的な扱いを受けているという批判もあります。例えば、観光目的で来日した東南アジア出身の旅行者が、何度も詳しい取り調べを受けたり、所持金の証明を求められたりするケースが多く報告されています。これらの取り締まりが不当な偏見に基づいている場合、それはレイシャル・プロファイリングとして捉えられます。

(2) 警察による職務質問と摘発の実例

日本国内では、警察による外国人に対する職務質問が頻繁に行われています。この職務質問は、一般的には「不審な行動」をしていると判断された場合に行われますが、外国人や特定の人種に属する者が、日本人よりも多く職務質問を受ける傾向が指摘されています。

特に、黒人や南アジア系の人々が日本国内で職務質問の対象となるケースが多く報告されています。例えば、ある黒人男性が繁華街を歩いているだけで、警察官に数度にわたって職務質問を受けるという事例があります。この男性は、特定の理由もなく「不審」とみなされ、所持品のチェックを受け、さらに身分証明書の提示を求められました。このような職務質問は、彼の見た目や人種に基づく偏見から行われた可能性が高いとされ、レイシャル・プロファイリングの典型的な例といえます。

(3) 公共の場における監視と取り締まり

公共の場でも、外国人に対するレイシャル・プロファイリングが見られます。例えば、地下鉄やショッピングモールなどのセキュリティチェックにおいて、特定の民族的特徴を持つ外国人が頻繁に監視されるケースがあります。また、外国人が集まる特定の地域やイベントでの警察の監視強化も指摘されています。

ある例として、東京で行われる大規模な祭りやイベントの際に、アジア系の外国人が重点的に警戒されるケースが報告されています。イベントのセキュリティスタッフや警察が、特定のグループの外国人に対してだけ身分証の提示を求めたり、持ち物検査を行ったりすることがあります。このような対応は、その人々が犯罪や不正行為を犯す可能性が高いという偏見に基づくものとされ、レイシャル・プロファイリングの一例です。

2. ゼノフォビアとの関連性

レイシャル・プロファイリングとゼノフォビア(外国人嫌悪)は密接に関連しています。レイシャル・プロファイリングが行われる背景には、外国人や特定の人種・民族に対する恐怖や偏見が存在することが多いからです。ゼノフォビアは、異質な文化や人々への恐れや不信感に基づいており、レイシャル・プロファイリングを正当化するための根拠とされることがあります。

(1) メディアの報道と社会的偏見

日本のメディア報道において、外国人犯罪に関するニュースがセンセーショナルに取り上げられることが多く、これが社会的な偏見を助長しています。例えば、特定の国籍の人々が犯罪に関与しているとされる事件が報道されると、その国籍や人種に対する不信感が強まる傾向があります。このような報道が繰り返されることで、一般の日本人の中には、外国人全体に対する不安や恐れを抱く人が増え、レイシャル・プロファイリングが容認される土壌が作られます。

また、「不法滞在者」や「不法就労者」に関する報道も、外国人全体が潜在的な犯罪者であるというイメージを強める一因となっています。こうした報道がゼノフォビアを助長し、それが警察や入国管理局による取り締まりの強化につながる場合もあります。結果として、外国人や特定の人種が差別的な取り扱いを受けることになるのです。

(2) 社会的ステレオタイプと偏見

日本社会における外国人に対するステレオタイプや偏見も、レイシャル・プロファイリングの背景にあります。例えば、「外国人は日本語が話せない」「文化的に異質である」「犯罪を犯しやすい」といったネガティブなイメージが根強く存在します。これらの偏見は、外国人が日本社会で受ける不当な扱いの一因となっており、レイシャル・プロファイリングが行われる際の根拠としてしばしば利用されます。

3. レイシャル・プロファイリングの影響と課題

レイシャル・プロファイリングは、外国人や特定の人種に対する差別と偏見を助長し、社会的な統合を妨げる重大な問題です。このような行為は、外国人が日本社会で感じる孤立感や不信感を強め、さらなる社会的排除を招く恐れがあります。外国人が日本で安心して生活し、社会に貢献できるようにするためには、レイシャル・プロファイリングを防止し、ゼノフォビアに基づく偏見を解消する努力が求められます。

今後の課題としては、警察や入国管理局などの公的機関による取り締まりや職務質問の透明性を向上させること、メディア報道のバランスを保ち、外国人に対する偏見を助長しないようにすることが重要です。また、学校教育や地域社会での啓発活動を通じて、多文化共生の意識を高めることも必要です。これにより、外国人と日本人が互いに理解し、尊重し合う社会を築いていくことが期待されます。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。