はじめに

「在日特権」 働かずに年600万円もらって税金は払わない? 繰り返し拡散する誤情報【ファクトチェックまとめ】 (2024/2/3 日本ファクトチェックセンター)の記事について以下に要約します。

  • 2024年11月頃、「在日特権」を主張するチラシがSNSで拡散され、誤った情報が広がった。チラシには、特別永住者が「働かずに年600万円貰う」「税金を納めない」「医療や水道が無料」などと記載されており、これに対してSNS上で議論が起きた。検証結果、これらの主張は誤りであり、特別永住者にはこのような特権はないと判明した。
  • 例えば、特別永住者には無条件で金銭を給付する制度はなく、納税義務もある。また、相続税や試験免除などの特典も存在せず、犯罪を犯しても実名が出ないわけでもない。公務員への就職も特別永住者にだけ許されているわけではなく、医療や住宅費の支給も特別永住者に限ったものではない。
  • これらの誤った情報は、ネットで繰り返し拡散されており、検証を通じて正しい理解が広まることが重要だとされています。特例法は戦後の日本国籍離脱者の在留資格を安定させるためのものであり、特権とは関係ないとされています。

近年、SNSやインターネットの普及により、多くの情報が瞬時に拡散する時代となりました。その中で、日本に在留している外国人、特に「特別永住者」に関する誤情報や偏見に基づいた主張が頻繁に拡散され、社会的な誤解を生んでいます。これらの誤情報は、特にネット掲示板やSNS上で広がることが多く、時には世論を煽る形で深刻な社会的な問題を引き起こすこともあります。以下では、在留外国人に関する誤情報の実例を挙げ、それに対する対策について考察します。

1. 在留外国人に関する誤情報の実例

(1) 「在日特権」についての誤情報

「在日特権」という言葉は、特に日本に長期間在留している外国人に関する誤解を招く主張の一つです。この言葉は、特に戦後に日本に住み続けた朝鮮半島や台湾出身者とその子孫である「特別永住者」に対して、優遇措置が与えられているという主張に使われることが多いです。例えば、「働かず年600万円を貰い、遊んで暮らしている」「税金を払わない」「犯罪を犯しても実名が報道されない」などといった誤解を与える内容が記載されたチラシがSNSで拡散されました。

これらの主張は、実際には事実と異なります。特別永住者には無条件で金銭が支給される制度はなく、税金を納めないこともありません。また、犯罪を犯しても実名が報道されないわけではなく、報道においては実名や通名が使用されることが一般的です。さらに、特別永住者は公務員になることができる場合もありますが、それはあくまで永住者としての一般的な資格に基づくもので、特別な優遇措置があるわけではありません。

(2) 「外国人は税金を納めない」誤情報

日本に在留している外国人に対して「税金を納めない」という誤情報も広まっています。しかし、これは明らかな誤りです。日本に住んでいる外国人には、日本国籍を持つ者と同様に住民税や所得税などの納税義務があります。特別永住者に限らず、すべての外国人は日本の税制に従い、納税義務を果たしています。税金の納付に関しては、特別永住者が他の永住者と異なる扱いを受けることはなく、平等に課税されます。

(3) 「特別永住者には相続税の免除がある」誤情報

「特別永住者には相続税が免除される」といった誤った情報も広がっていますが、これも誤りです。日本国内での財産に関しては、外国籍の人でも相続税を支払う義務があります。日本における相続税は、相続人の国籍や特別永住者であるかどうかに関係なく、相続財産の所在によって課税されます。このような誤情報は、特定の集団を不当に利得を得ていると非難するために使われることが多いため、正確な情報を広める必要があります。

(4) 「特別永住者には無条件で医療費が無料」誤情報

「特別永住者は医療費が無料」という誤情報もあります。特別永住者が無料で医療を受けることができる制度は存在しません。ただし、生活保護を受けている場合や自治体が提供する医療扶助を受けている場合には、一定の条件を満たすことで医療費が軽減されることがありますが、これは特別永住者に限らず、他の外国人にも適用されることです。この誤解も、特別永住者に対する過剰な期待や非難を生む原因となっています。

2. 誤情報の拡散が社会に与える影響

誤情報が拡散されることによって、在留外国人に対する偏見や差別が助長される可能性があります。特に「在日特権」などの誤った主張が広まると、外国人の権利や生活に対する不理解が深まり、差別的な言動が増えることがあります。こうした誤解や偏見は、社会的な対立を生み、共生社会の実現を妨げる要因となります。

また、誤情報の拡散は、外国人コミュニティと日本人社会の間に不信感を生じさせることがあります。これにより、外国人が日本社会に適応し、積極的に貢献することが難しくなり、結果として社会全体の協力や連帯感が損なわれます。

3. 誤情報に対する対策

誤情報の拡散を防ぐためには、さまざまな対策が必要です。

(1) ファクトチェックの強化

ファクトチェックは、誤情報が広がるのを防ぐために非常に重要です。日本ファクトチェックセンター(JFC)などの団体が行うように、SNSやインターネット上で流れる誤情報に対して、迅速に正しい情報を提供することが求められます。政府や民間のファクトチェック機関は、誤情報を指摘し、その証拠を示すことで、誤解を解く努力を続ける必要があります。

(2) 教育の充実

誤情報の拡散を防ぐためには、教育の役割も大きいです。学校教育や社会教育を通じて、外国人に関する正しい知識を広めることが重要です。特に、在留外国人に関する法律や社会制度についての理解を深めることで、無知から来る誤解を防ぎます。また、メディアリテラシー教育を強化し、インターネット上で流れる情報の信頼性を見極める力を育むことも重要です。

(3) SNSの適切な運用

SNSプラットフォームには、誤情報を削除したり、警告を出したりする仕組みを強化する責任があります。企業として、誤情報を放置することは社会的に大きな影響を及ぼす可能性があるため、適切な情報管理を行うべきです。また、誤情報を拡散するアカウントやページに対しては、ペナルティを科すなどの対策を講じることが必要です。

(4) 市民活動の推進

市民活動やNGOの活動も、誤情報を訂正するために有効です。外国人に関する正しい情報を広め、偏見や差別に立ち向かうために、地域コミュニティでの啓発活動やイベントを通じて、実際の状況を知ってもらうことが重要です。外国人と日本人が互いに理解し、尊重し合うための取り組みを積極的に行うことが求められます。

4. 結論

日本における在留外国人に関する誤情報は、社会的な対立や偏見を引き起こす原因となります。そのため、誤情報の拡散を防ぎ、正しい理解を広めることが重要です。ファクトチェック、教育の充実、SNS運営の強化、市民活動の推進など、さまざまな対策を通じて、共生社会の実現に向けて取り組むことが求められます。誤解や偏見に基づく情報を排除し、多様性を尊重する社会を作るために、私たち一人一人ができることを考え、行動することが必要です。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。