文春オンラインの記事(2024/10/22)によれば、東京大学における留学生の割合が中国人を中心に相当高くなっているとのこと。そもそも先進国における留学生数の実態はどのようなものでしょうか。
留学生の割合は、各国の高等教育機関において国際化を象徴する重要な指標の一つです。特に、先進国の大学においては留学生の受け入れが活発であり、各国の教育政策や地理的・文化的背景によってその割合は大きく異なります。以下では、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、オーストラリア、日本などの主要な先進国を例に取り、各国の留学生受け入れの状況を比較します。
アメリカ
アメリカは世界的に見て最も多くの留学生を受け入れている国です。Institute of International Education(IIE)のデータによると、2019年度には約100万人の留学生がアメリカで学んでいました。これは、アメリカの全体の大学生数の約5.5%を占めています。特にSTEM(科学、技術、工学、数学)の分野では留学生の割合が高く、大学院レベルにおいてはさらにその割合が上がる傾向にあります。国別に見ると、中国やインドからの留学生が特に多く、アジア地域が主な送出地域となっています。
アメリカの大学は世界的な教育水準や研究環境の高さが魅力であり、多くの留学生にとってトップクラスの選択肢となっています。また、英語が世界共通語として広く使用されていることも、留学生にとって大きな要因です。しかし、留学生に対するビザの取得や滞在の規制が厳しくなったり、学費が高額であることが課題として挙げられます。
イギリス
イギリスもまた、留学生の受け入れにおいて世界の主要国の一つです。高等教育統計局(HESA)のデータによると、2020年から2021年にかけて、イギリスの高等教育機関には約60万人の留学生が在籍しており、これは全学生数の約22%に相当します。イギリスの教育機関は、オックスフォード大学やケンブリッジ大学といった世界的に有名な大学を有しており、これらの大学に留学を希望する学生が多いのが特徴です。
イギリスの留学生の出身国としては、中国が圧倒的に多く、インドがそれに続きます。特に近年では、イギリスがEUからの離脱(ブレグジット)を経験し、EU出身の学生が減少する一方で、アジアやその他の地域からの留学生が増加しています。また、イギリス政府は「グローバル・ブリテン」戦略の一環として、留学生受け入れを促進する政策を展開しており、留学生に対する就労ビザの緩和などが行われています。
ドイツ
ドイツは、高品質な教育を提供する国でありながら、多くの大学が無償または低額の学費で留学生を受け入れるため、世界中から人気があります。2020年のデータによると、ドイツの大学に在籍する留学生は約32万人で、全体の約11%を占めています。中国、インド、トルコなどからの留学生が多いですが、ヨーロッパ諸国からも多くの学生が訪れます。
ドイツの大学教育は、特にエンジニアリングや自然科学分野で高い評価を受けており、特に技術系の大学では多くの留学生が学んでいます。また、ドイツ語での授業が多いものの、近年では英語で提供されるプログラムも増加しており、これがさらに留学生の受け入れを後押ししています。
フランス
フランスは、歴史的に文化や芸術の中心地であり、多くの留学生がその分野を学ぶために訪れています。フランス教育省のデータによると、フランスには約36万人の留学生が在籍しており、全学生の約10%を占めています。特にアフリカのフランス語圏の国々からの留学生が多く、モロッコ、アルジェリアなどが主要な送出国となっています。
フランスの大学も多くの場合、学費が比較的安価であることが留学生にとって魅力的な要素です。また、近年では英語で提供されるコースも増えており、これによりフランス語を母語としない学生にも門戸が広がっています。
カナダ
カナダは、多文化共生社会としての特徴を生かし、留学生受け入れに非常に積極的な国の一つです。2020年には約53万人の留学生がカナダで学んでおり、全体の学生数の約16%を占めています。特に中国やインドからの留学生が多く、他にはフィリピンや韓国からの学生も目立ちます。
カナダの魅力は、治安の良さや自然環境、そして英語とフランス語のバイリンガル教育が受けられる点にあります。また、カナダ政府は留学生に対して寛容な移民政策を採っており、卒業後の就労ビザや永住権取得のプロセスが比較的容易であるため、多くの留学生がカナダでのキャリアを求めています。
オーストラリア
オーストラリアもまた、留学生に人気の国です。オーストラリアの高等教育機関には約40万人の留学生が在籍しており、これは全学生数の約27%に相当します。アジアからの留学生が圧倒的に多く、特に中国とインドからの学生が全体の半数近くを占めています。
オーストラリアの大学は、特にビジネスやエンジニアリング分野での国際的な評価が高く、温暖な気候や生活の質の高さも魅力です。また、政府が留学生の就労機会を提供する政策を進めていることも、留学生にとって大きな利点となっています。
日本
日本も近年、留学生の受け入れを強化しています。文部科学省のデータによると、2020年には約30万人の留学生が日本で学んでおり、全学生数に対して留学生の割合は約5%です。中国、ベトナム、ネパールなどアジア地域からの学生が大半を占めています。特に中国人留学生は日本における留学生全体の半数以上を占める大きなグループとなっており、東京大学や京都大学を含む主要な大学に多くの中国人学生が在籍しています。
日本の大学は、技術や経済の分野で高い評価を得ており、特に工学系のプログラムが人気です。また、近年では英語での教育プログラムも増加しており、非日本語圏からの留学生にも門戸が広がりつつあります。しかし、日本は他の先進国と比較すると留学生受け入れの歴史が浅いため、留学生のサポート体制や文化的な適応に関する課題が指摘されています。
留学生受け入れの背景と影響
各国が留学生を積極的に受け入れる背景には、学術的な国際交流の促進だけでなく、経済的な側面もあります。留学生は授業料収入や生活費によって受け入れ国の経済に貢献するだけでなく、優秀な人材としてその国の労働市場に新たな活力を与えることが期待されます。特に理工系分野では、留学生が研究やイノベーションの担い手となることが多く、留学生の存在は国際的な競争力を高める要素となっています。
一方で、留学生の増加に伴い、文化的な多様性への対応や学生生活のサポート体制の強化が求められています。留学生は言語や文化の違いから、学業や生活面での困難に直面することが多く、各国の教育機関はこれに対して支援を強化する必要があります。
結論
先進国における大学生に対する留学生の割合は、各国の政策や教育制度によって異なるものの、全体として留学生の重要性が増していることは共通しています。アメリカやイギリスなどは、すでに多くの留学生を受け入れており、その割合も高いですが、他の国々も留学生の受け入れを拡大しつつあります。日本においても、留学生の増加により大学の国際化が進んでおり、今後さらなるサポート体制の充実が求められるでしょう。