株式会社西山知材として運営している、「在留外国人向けの便利マップ」(https://map.japan-workers.com/)では、全国の自治体(都道府県、市区町村)別に、在留外国人数(国別・在留資格別)や、地域における外国人支援機関(医療機関、在留支援の行政書士や特定技能登録支援機関等)などを表示しています。
この中で、自治体を中心とした公的機関が発信する外国人向け情報を”お役立ち情報”として掲載していますが、充実度は自治体によって実に様々です。
自治体が在留外国人向けに発信すべき情報とは
全部で1960(都道府県、市区町村の総数、市と区は別にカウント(例えば東京都は、東京都全体で1、特別区で23とカウントし合計24))ある自治体の公式ホームを確認した結果、自治体が在留外国人向けに発信している情報や施策は、最大公約数的に、以下のような項目に集約されます。
- 外国人向け
- 転入・転出の手続と在留カードについて
- ホームページの外国語対応
- 外国人向け相談窓口の設置と案内
- 日本語教室(無料)の設置と案内
- ゴミの出し方等生活ルールの案内
- 防災マップ・ハザードマップ等、防災対応のための情報発信
- 雇用者向け
- 外国人を雇用するにあたっての注意事項等
- 退職時の未払税金の一括徴収・納税管理人指定のお願い
1-1.転入・転出、在留カードについて
2012年に外国人登録制度が廃止され、在留外国人(中長期在留者)も日本人と同じように住民基本台帳の適用対象となり住民票が発行されるようになったこと、又これに関連した、転入・転出の手続と在留カードの扱いに関する案内がこれにあたります。
岩手県久慈市の例:Google検索で表示されるページタイトルが単に”外国人の方へ”等といった記述が多い中、”外国人の方の届出・手続きについて”となっていて、比較的わかりやすいです。
1-2.ホームページの外国語対応
Google翻訳機能を使ってホームページを多言語に翻訳する対応を行っているところが殆どです。対応可能言語については、自治体の国籍別人口に配慮しているところもあります。
岡山県倉敷市の例:英語、ロシア語、中国語(繁体・簡体)、タイ語、韓国語に対応
1-3.外国人向け相談窓口の設置と案内
自治体の多くは、外国人が困ったときに相談できる窓口について案内しています。チャネル(電話・メール・対面)、自治体自らが開設している場合と上位自治体(例えば市であれば県)の窓口を案内する場合、対面窓口常設か曜日・時間指定か等、設置形態は様々です。
福岡県田川市の例:「やさしい日本語」で上位自治体である福岡県が運営する福岡県外国人相談センターを案内しています。
1-4.日本語教室(無料)の設置と案内
こちらは、特に自治体が独自に設置すべき施策です。例えば、町や村が県に委ねることも可能ですが、やはり地域の講師と生徒(外国人とその家族)が同じ教室に集まって、日本語を学習することは、コミュニティの活性化に大きく寄与します。
埼玉県秩父市の例:外国人のための日本語教室(英語と”やさしい日本語”での案内)
1-5.ゴミの出し方等生活ルールの案内
ゴミの出し方に代表されるように、生活面でのマナーに対する意識は国により全く異なります。ルールを知らず自国の感覚でゴミを近隣に放置してしまうことが、そのコミュニティにおける問題の発端となるケースが報告されています。(川口市のクルド人問題等)
千葉県浦安市の例:ゴミの出し方に限らず、あらゆる面での情報が1ページに、かつ”やさしい日本語”でまとめられており、モデルケースといえるでしょう。
1-6.防災マップ・ハザードマップ等、防災対応のための情報発信
つい先日の能登半島豪雨被害、本年1月の能登半島地震に限らず、日本が災害大国であることは外国人にとっても常識であり、日本国中どこに住んでも災害への備えが重要となります。特に言語の障壁が致命的なものとならないよう、平時における防災情報の発信が極めて重要となります。
神奈川県中井町の例:地域のハザードマップが、英語、スペイン語、ポルトガル語、韓国語、中国語、ベトナム語、及びタガログ語で提供されています。
2-1.外国人を雇用するにあたっての注意事項等
離職、雇入時に発生する各種届出義務について、注意喚起ページを設けているケースが一般的です。
北海道深川市のケース:厚生労働省、出入国在留管理庁それぞれのリーフレットへのリンクを掲載。
2-2.退職時の未払税金の一括徴収・納税管理人指定のお願い
外国人の方が出国し、住民税を納めることができなくなる場合、納税義務者本人に代わって納税通知書の受け取りや市民税・県民税の納付を行う納税管理人を定めておく必要がありますが、このことを自治体から雇用主にお願いするものです。
鳥取県境港市の例:出国される外国人の納税管理人について
まとめ
日本で働き、暮らす外国人にとって、自治体のサポートは我々日本人以上に重要です。自治体の役所を訪れる前に、インターネットによる情報発信を見るだけでも、自治体が外国人に手厚いかどうかを伺い知ることができるものです。
街の活気を取り戻そうとしたり、税収増加を目的として、若い人たちの移住を促す取り組みは、何れの自治体でも重要施策です。しかし、昨今の急激な在留外国人の増加を考えた時には、まずは外国人向けの情報発信を充実させることも大事なのではないでしょうか。
特に住民全体に対して在留外国人が多いにも関わらず、情報発信の充実度が低い自治体には速やかな改善を望みたいものです。