過去2年間でのべ1万8000人に及ぶ外国人労働者を違法に派遣していた会社経営者の男が逮捕されたとのこと。(2024/08/21 ABEMA TIMES)

不法就労助長罪は、日本の法律において外国人の不法就労を助長する行為を処罰するために設けられた犯罪です。外国人が日本国内で働く場合、適切な在留資格を取得している必要があります。もし、在留資格がない、または許可された範囲を超えて就労している場合、その行為は「不法就労」とみなされます。そして、この不法就労を助長する行為が刑事罰の対象となります。

1. 不法就労助長罪の法的根拠

不法就労助長罪は、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)第73条の2に規定されています。この規定によれば、以下の行為が不法就労助長罪として処罰されます。

  • 不法就労者を雇用する行為: 外国人を、その者の在留資格が許可する範囲を超えて働かせること、または在留資格がない者を働かせること。
  • 不法就労を依頼・媒介する行為: 不法就労をすることを知りながら、それを依頼したり、その媒介を行うこと。
  • 不法就労を助けるために便宜を提供する行為: 不法就労を助けるために住居や道具を提供する、またはその他の便宜を図ること。

これらの行為を行った者は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

2. 派遣先における不法就労助長罪の適用

不法就労助長罪は、通常、雇用主や人材派遣業者などが対象となることが多いですが、派遣先企業に対してもこの罪が適用されるか否かが問題となることがあります。

(1) 派遣先の責任の可能性

派遣先が、派遣労働者が不法就労者であることを知っていた、または注意を払うことで容易に知ることができた場合、不法就労助長罪が適用される可能性があります。例えば、派遣会社が適切な手続きを行わずに外国人労働者を派遣し、派遣先企業がその外国人の在留資格の確認を怠った場合、派遣先企業も不法就労助長罪の責任を問われる可能性があります。

さらに、派遣先が派遣労働者に対して、在留資格が許可する範囲を超えた業務を指示した場合も、同様の責任が生じる可能性があります。この場合、派遣先は不法就労を助長したとみなされるため、処罰の対象となり得ます。

(2) 実務における対応策

派遣先企業が不法就労助長罪のリスクを回避するためには、以下の対応策が有効です。

  • 派遣会社の選定における慎重な検討: 信頼性の高い派遣会社を選定し、その会社が外国人労働者の在留資格を適切に管理しているかどうかを確認することが重要です。
  • 外国人労働者の在留資格の確認: 派遣先として、受け入れる外国人労働者の在留資格が適切であるかを確認する責任があります。具体的には、派遣された労働者の在留カードを確認し、その資格が受け入れる業務に適しているかを確認します。
  • 適切な業務の指示: 派遣労働者に対して、在留資格の範囲内で業務を指示することが必要です。万が一、資格外活動に当たるような業務を指示した場合、派遣先も不法就労助長罪の対象となり得ます。

(3) 法的見解と判例

派遣先に不法就労助長罪が適用されるか否かについては、過去の判例や法的解釈が参考となります。日本の裁判所では、派遣先企業が「不法就労を認識していたか、または注意を払うことで認識できたか」が重要な判断基準となることが多いです。認識していた場合や、認識できたにもかかわらず適切な対応を怠った場合、派遣先企業は処罰の対象となります。

3. 総括

不法就労助長罪は、外国人労働者の適法な雇用を確保するための重要な規定です。派遣先企業もこの罪の適用対象となる可能性があるため、外国人労働者を受け入れる際には慎重な対応が求められます。特に、派遣労働者の在留資格の確認と適切な業務の指示が不可欠です。

適切な法的対応を行うことで、企業は不法就労助長罪のリスクを回避し、健全な労働環境を維持することができます。また、外国人労働者に対する法的な責任を果たすことは、企業の社会的責任を全うするうえでも重要です。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。