中国新聞の記事
広島名物、お好み焼き店にも特定技能外国人 「将来は経営に関わりたい」 副店長に昇進も(2024/7/17 中国新聞) によれば、調理者として、特定技能外国人の雇用に踏み出せない外食業者は少なくないとのこと。このことについて解説します。
調理人としての在留資格
街の食堂やレストランで、調理師として働く外国籍であろう方々を見かけることは日常の光景となっていますが、彼らは一体どういう在留資格の下で働いているのでしょうか。
一般的に考えられるケースは以下のようなものになります。
- 在留資格「技能」として、伝統的な外国料理の調理人として働いている。
- 在留資格「特定技能」として、料理の種類を問わず、調理人として働いている。
- 調理活動を前提としない在留資格(例えば「留学」)で資格外活動許可を得て、アルバイトの調理人として働いている。
- 日本の食文化普及を目的とした日本料理修得のための在留資格「特定活動」で、日本料理の調理人として働いている。
- 日本の大学を卒業した外国人の就労支援のための在留資格「特定活動(46号)」で、調理活動を行っている。
- 就労制限の無い身分系の在留資格(「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」「永住者」)の下、調理人として働いている。
よくご質問を頂く、#1と#2の違いについて以下に述べたいと思います。
在留資格:「技能」の場合
「特定技能」が創設されるまでは、調理人としての活動を特に予定した在留資格は「技能」のみでした。「技能」の在留資格としての意味合いは、”外国において考案され我が国において特殊なもの”とされる、即ち、日本人では行うことのできない知識・経験であり、調理活動の領域では10年の実務経験を要します。(タイ料理人は5年)
”外国において考案され我が国において特殊な”料理の調理活動である必要があり、例えばチャーハンやラーメン等は、相当程度日本化されているため「技能」が対象としている調理活動とはみなされない一方で、シューマイは対象とされるのが判例の傾向です。
在留資格「技能」の在留期間は最長5年で何度でも更新可能です。また転職制限は無く、転職のあたって在留資格変更許可申請を行う必要はありません。
在留資格:「特定技能」の場合
「特定技能」が予定している特定作業分野「外食業」の中で、調理人としての活動を行うことが可能です。この活動には、「技能」のような料理の内容に関する制限はありません。
また、申請人(外国人)本人に定められた要件も、「技能」のような厳しい経歴要件(10年)は無く、比較的簡単な技能測定試験と日本語能力試験に合格していることとされています。(外食業分野における新たな外国人材の受入れについて)
ただ、雇用主(特定技能所属機関といいます)に対しては、機関としての必要手続、義務、要件が多種詳細にわたって定められています。(下記に一部抜粋)
- 必要手続
- 特定技能外国人支援計画(職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画)を作成、出入国在留管理庁に提出すること
- 特定技能外国人支援計画の実施状況、特定技能外国人の活動状況に関する届出
- 等々
- 要件
- 特定技能外国人支援計画に定められた内容を実施できる体制や設備を備えていること(送迎、住居確保、生活相談その他諸々)
- 外国人の健康・生活状況を把握するための措置を講じていること
- 雇用主の都合による離職者(非自発的離職者)を発生させていないこと
- 行方不明者を発生させていないこと
- その他欠格事由(関連法律違反、暴力団構成員、制限行為能力者等)にあたらないこと
- 等々
- 義務
- 保証金などを徴収しないこと
- 申請人が負担する諸費用について本人がわかる言語で説明し理解を得ていること
- 申請人が一時帰国を希望した場合には必要な有給休暇を取得させること
- 申請人が帰国旅費を負担できないときは、これを負担すること
- 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること
- 等々
なお、特定技能1号で在留することのできる期間は通算で5年と決められています。
まとめ
入管政策の変遷は、下記のようにまとめることができます。
外国人本人 へのハードル | 雇用者 へのハードル | |
従来 (例:技能) | 高 | 低 |
これから (例:特定技能) | 低 | 高 |
今日では、単純労働者として外国人が就労できるようになった一方、雇用主の管理者責任・負担が劇的に重くなっています。
このような負担は中小企業にとっては非現実的であるというのが、冒頭記事の趣旨になります。
なお、特定技能においては、全国にわたって登録支援機関があり、特定技能外国人支援計画の策定、実施や、在留資格申請の取次までを委託することができます。
ただ、登録支援機関に委託するにしても、その費用が発生しますし、雇用主は外国人の管理責任から逃れることはできません。
大企業は、企業自体が登録支援機関となり(出入国在留管理庁に届出)、外国人を支援する専門の部署を設けています。