静岡新聞の記事

「そばで面倒を見たいだけなのに… 母国の親呼ぶビザ、取得厳しく 静岡県内永住資格者 悲痛な叫び」(静岡新聞 2024/06/28)によれば、”日本で暮らす外国人が身寄りのない高齢の親を母国から呼び寄せる際に必要な「老親扶養ビザ(査証)」の取得が難しく、困惑の声が上がっている。許可を得られなかった永住資格を持つ県内在住者からは「親の面倒を見たいだけなのに。どうしていいか分からない」と悲痛な叫びも。…(中略)…  出入国在留管理庁によると、永住者の親であることを理由に取得できる在留資格はなく、人道的な配慮から認めるケースが例外的にあるという。” とのこと。

永住者の配偶者や子については、「永住者の配偶者等」という在留資格がありますが、これには親は含まれません。

しかし、このことから、“永住者の親であることを理由に取得できる在留資格はなく、人道的な配慮から認めるケースが例外的にある“ と言うには正確ではなく、正しく記載するとすれば、「永住者の親であることを理由に取得できる在留資格は「特定活動」であるが、許可要件が厳しい。」となります。

以下解説します。

在留資格全体における「特定活動」の位置づけ

在留資格の全体構成

約30ある在留資格の全体構成は以下のようになります。

  • 行おうとする活動を基準に与えられるもの (活動類型)
    • 活動内容が在留資格毎に個別に定義されており法務大臣が個々の外国人に指定することを要しないもの
      • (例)「技術・人文知識・国際業務」「留学」等
    • 法務大臣が個々の外国人に活動内容を指定することを要するもの > 「特定活動」
      • 活動内容が法務大臣が定める告示に定義されているもの (告示特定活動)
      • 活動内容が法務大臣が定める告示に定義されていないもの  (告示外特定活動
  • 身分・地位を基準に与えられるもの(地位類型)
    • 身分・地位が在留資格毎に個別に定義されているもの
      • (例)日本人の配偶者等、永住者の配偶者等
    • 身分・地位が個別に定義された在留資格に該当しないが、法務大臣が特別な理由を考慮して居住を認めるもの > 「定住者」
      • 地位が法務大臣が定める告示に定義されているもの (告示定住)
      • 地位が法務大臣が定める告示に定義されていないもの (告示外定住)

定義

上記整理のとおり、「特定活動」は、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動 であり、簡単にいえば、活動類型の在留資格の中でいずれの在留資格にも該当しない場合の”受け皿”としての性格を持ちます。(地位類型における「定住者」も同様)

なお、「特定活動」の在留資格を取得するにあたり、告示特定活動は、他在留資格と同様、在留資格認定証明書交付申請を行う手続となりますが、告示外特定活動に当手続を利用することはできません。まずは短期滞在で入国し、告示外特定活動への在留資格変更許可申請を行うということになります。

許可要件

告示外特定活動の許可要件

原則として告示特定活動のみが認めらますが、人道上その他特別の事情により、告示外特定活動も認められることがあります。当該記事のケースは、一般に、告示外特定活動における”連れ親”類型と呼ばれます。

個々の在留資格について、これが付与されるかどうかの予測は、入管法、施行規則における上陸許可基準、公開されているガイドライン、及び当局の内部審査基準である「審査要領」※から導き出すことが可能です。

※「審査要領」はホームページ等において公開されているものではなく、情報公開請求により取得可能なものです。(私は行政書士会が取得したものを参考にしています。)

しかし、告示外特定活動については、基準が明確でなく、情報公開請求により開示された「審査要領」の当該部分は黒塗りとなっています。

弁護士・行政書士の実務では、類型化した告示外特定活動それぞれについて、”先例”にもとづき、許可されるかどうかを予測し、許可が見込める場合は、先例において基準とされたであろう許可要件を満たす立証書類を準備し、申請を行うことになります。

”連れ親”類型の許可要件

”先例”から導き出されている、”連れ親”類型の許可要件は下記を全て満たすことだそうです。(新日本法規 山脇康嗣 詳説入管法の実務)

  1. 65歳以上であること (※)
  2. 日本外に配偶者がいないこと又はいたとしても別居状態にあり、同居が見込めないこと
  3. 日本にある子以外に適当な扶養者がいないこと
  4. 日本にある子(当該子の配偶者を含む)が一定の収入を得ており、かつ、納税義務を履行していること(適正な所得申告を行い非課税である場合を含む)

※最近は70歳以上という情報あり

まとめ

当該記事のケースでは、上記要件の何れかを満たさなかったということだろうと思われます。記事は、”同管理庁は「永住者の在留資格数が年々更新される中、高齢の親を呼び寄せたいニーズがあることは認識している」としている。” と締めくくっているので、近い将来、「告示特定活動」或いは「永住者の配偶者等」に含める形で、より審査基準が明らかになることを望みます。

在留・入管関連ニュース

投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。

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