日本在住の外国人の方から、何らかの事情で転職したいという相談を受け、この時に在留カードを手元に持っていないという事を聞き、驚く事があります。
転職の前後で必要な入管関連の手続
転職に当たって押さえておきたい入管関連の手続きは以下のとおりです。(〇:必須、△:望ましい)
- 〇退職後、出入国在留管理庁への退職の届出(所属機関等に関する届出手続といいます。)
- 〇入社後、出入国在留管理庁への入社の届出(同上)
- △就労資格証明書交付申請
上記1,2は同時に行うことができ、その様式も含め、入管庁のHPに掲載されています。また、これらの届出は、実際にその事実から14日以内に行わなければなりません。
(3を行った方がよいことについては、当ブログの投稿「就労資格証明書交付申請の意義について」に記載しておりますので、参考にしてください。)
これら手続きを依頼された際、1,2の届出の際には、在留カードの写しを添付し、カード記載のとおりに届出の様式に記入する必要があるため、在留カードの写しを依頼人に求めたところ、手元に無いのでちょっと待ってください、と言われることがあります。
在留カードを携帯していないとどうなるか。
警察官の職務質問等で、不携帯が発覚すると、20万円以下の罰金という刑事罰が課される可能性があります(入管法第七十五条の三)。
刑事罰が下ると、罰金そのものの不利益のみでなく、前科歴がつくことで、その後の在留期間更新や在留資格変更の申請時に非常に不利となります。(不許可や、許可されても期間を短くされるなど)
在留カードの不携帯はなぜ起こるか。
周知のとおり、技能実習生の失踪数に歯止めがかからない(技能実習生の失踪者数の推移)ことは、我が国の入管行政にとって最大の問題の1つです。このため、技能実習制度は廃止され、転職制限を緩和する「育成就労」制度が国会で議論されています。
在留カード不携帯の要因としては、外国人が不注意により携帯していないケースや紛失してしまっていることも勿論ありますが、実習者(雇用主のこと)や監理団体が、実習生の失踪を防ぐために、在留カードやパスポートを保管するケースが考えられます。
(なお、技能実習に限って言えば、このことを法律(技能実習法)は予定しており、監理団体等が在留カードを預かる行為を禁じており、違反した場合の罰則は六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金になります。(技能実習法第四十八条、百十一条))
技能実習生のみならず、雇用する外国人の失踪を防ぐために、在留カード等を預かる行為が見られるようです。
まとめ
外国人の方へ
在留カードを他人に預けてよいケースは、在留期間更新許可申請や、在留資格変更許可申請を行う際の、以下の場合です。
- 申請を会社の方や、弁護士・行政書士に依頼する場合で、入国管理局で申請を書面で提出する場合(申請時に在留カードの提示が必要となります。なお、オンラインの場合は在留カード提示義務はありません。)
- 許可が下りた後、新しい在留カードの受取を、弁護士・行政書士に依頼する場合
上記のとおり、在留カード不携行は違法となりますので、前者の場合は必ず、依頼する方から預かり証を取得しておいてください。又、後者の場合も、ご本人からの依頼書を入管に提出することが義務付けられています。
上記のタイミング以外は、在留カードを他人(雇用者含む)に預けてはいけません。
雇用者・技能実習監理団体・特定技能登録支援機関の方へ
記載のとおり、在留カードを預かることは、外国人の方の在留資格が技能実習である場合は、法律(技能実習法)で禁止されていますし、それ以外の在留資格の場合、法律で明文化されていないものの、預かる行為自体が、外国人の方に違法な状態を作りだすことになります。
このことが入管庁に知られた場合、望ましくない受入機関として捉えられ、その後の様々な審査で不利な立場に置かれる可能性も念頭におき、更新・資格変更のため、一時的に預かること以外に、在留カードを預かることは避けるようにしてください。