「うれしいし驚きも」タイ人の母親のもとで日本で生まれた高校生と中学生の姉弟に在留特別許可 これまでは在留資格なく「仮放免」 のニュース(2024/12/26 SBC信越放送)に、「政府は8月、在留資格のない子どもに、「家族一体」で在留特別許可を認める方針を示しましたが、2人の母親は過去に非正規入国した経緯があり、「消極事情」にあたるとして個別の総合判断となっていました。」とあります。

<法務大臣会見の意味>

記載されている”方針”とは、令和5年8月4日(金)法務大臣臨時記者会見の概要 のことです。

ここで法務大臣は、”今回、我が国で出生して学校教育を受けており、引き続き我が国で生活することを真に希望していると認められるこどもについては、家族一体として日本社会との結び付きを検討した上で、在留特別許可をしたいと考えています。(割愛)親に看過し難い消極事情があるような場合には、在留特別許可を出せない場合も残らざるを得ません。 ただし、今回の判断に当たりましては、過去の長期の不法滞在を消極評価しないこととしたいと考えています。” と述べました。

これは何を意味するのでしょうか。

在留特別許可が出されるケースは、(1)配偶者が日本人の場合、(2)配偶者が正規に在留する外国人の場合、(3)外国人家族の場合等と類型化されており、「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について(令和4年)」にも、その類型ごとに事例が公表されていますが、会見で述べられたようなケースは、事実上特別許可が出されていますし、ガイドライン 上も不許可となるようには汲み取れません。

在留特別許可は、入国審査官の審査、特別審理官の口頭審理、そして異議の申出に対する法務大臣の裁決という退去強制手続の三審制において、異議の申出に対する法務大臣の裁決に際して、異議の申出に理由がないとしても特例として法務大臣が出すことができるとされるものです。

そして、この許可を求めるため、外国人はガイドラインに沿った形で、家族との結びつき等日本に留まるべき理由等(積極要素)と、犯罪歴や入管法上罪に問われ退去強制の対象となった事実(消極要素)を記載し、前者が後者を上回っていることを詳細に説明した願出書を提出します。(通常は弁護士・行政書士に依頼します。)

法務大臣会見の中で出てくる、消極評価、消極事情という表現はこのことを指します。

以上のことから、法務大臣の会見の意味としては以下の可能性があるのではと考えています。

  • 家族一体の場合は、願出書に長期の不法滞在そのものを消極要素にわざわざ書かなくてよい。
  • 家族一体の場合は、上記三審制の中で法務大臣の裁決まで行かずして(入国審査官の審査、特別審理官の口頭審理)、即ち異議の申し立てをすることなく在留特別許可が出されるようになる。
  • 実際に当該ケースは許可が出されているという事実がまだあまり知られていないのでその周知

ガイドラインの改訂が予定されているようですので、動きを追っていきたいと思います。

英語の記事はこちら

入管・在留資格関連ニュース

投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。

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