私たちはこれまで、外国人政策をめぐるさまざまな課題を見てきた。
労働、在留資格、帰国後の市場、そして社会統合。

そこに共通して横たわっているのは、
制度の「断絶」である。

そして、その断絶が最終的に損なうものは、
単なる効率性ではない。
それは、社会における「信頼」そのものである。


制度はつながっていない

日本の外国人政策は、個別にはよくできている。

入管制度は厳格である。
労働法も体系的である。
社会保険制度も整備されている。

しかし、それらは横断的にはつながっていない。

・在留資格の審査では適法とされる雇用が
 労働法の観点では問題を抱えている
・社会保険未加入が放置されても
 在留手続には直ちに反映されない
・帰国後のキャリアは制度上ほとんど考慮されない

この分断の中で、最も大きな負担を負うのは、
制度を信じて行動した当事者である。


信頼は制度から生まれる

人は、制度を信じるから行動する。

適法に働けば在留が安定する
税を納めれば社会の一員として扱われる
努力すれば次のステップに進める

これらはすべて、制度に対する信頼である。

しかし、制度間に断絶があると、
この信頼は簡単に崩れる。

・まじめに働いても更新が不安定になる
・法令違反をしている企業のもとで働かざるを得ない
・帰国後に活かせない経験のために人生を費やす

その結果、制度は守られなくなる。
そして、「逸脱」が合理的選択になってしまう。


公定力と安定性という視点

日本の法制度には、重要な概念がある。
それが「公定力」である。

行政行為は、たとえ瑕疵があっても、
正式に取り消されるまでは有効とされる。

この考え方は、単なる技術論ではない。
それは、社会の安定性を支える思想である。

もし、行政判断が後から容易に覆るならば、
人は制度に基づいて行動することができない。

均衡共生モデルが重視するのは、まさにこの点である。

予測可能性がなければ、共生は成立しない。


透明性が信頼を支える

一方で、公定力は万能ではない。

裁量が広い分野では、
その判断過程の透明性が不可欠となる。

ここで重要になるのが、
実体的判断過程統制審査のような仕組みである。

判断の結果だけではなく、
その過程が合理的であるかを問う。

この視点は、外国人政策において極めて重要である。

なぜなら、
在留資格の判断は個々人の人生を大きく左右するからである。


均衡共生モデルの提案

均衡共生モデルは、次のように考える。

制度は「厳しいか優しいか」ではなく、
「一貫しているか」で評価されるべきである。

そのために必要なのは、

・在留制度と労働法の接続
・社会保険・税制度との連動
・帰国後を含めた労働市場設計
・判断過程の透明化

である。

これらが整ったとき、初めて、

・制度を守ることが合理的であり
・長期的な関係構築が可能となり
・社会全体の安定が確保される


共生とは「信頼の制度化」である

共生とは、感情ではない。

それは、制度によって支えられた状態である。

そして、その核心にあるのは、
人が制度を信じられるかどうかである。

外国人政策は、しばしば
「受け入れるか、制限するか」という二項対立で語られる。

しかし、本質はそこにはない。

信頼できる制度を設計できるかどうか。

均衡共生モデルは、
その一点に焦点を当てる。


次回予告

次回は、
この「信頼」をさらに具体化するために、

「労働は商品ではない」という原則と外国人労働政策

を取り上げる。

ヴェルサイユ体制において確認されたこの理念は、
現代の外国人労働政策にどのような示唆を与えるのか。

制度と人間の関係を、もう一度見直していく。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。