世界は今、排除へと傾きつつあります。
欧州では国境管理強化が進み、豪州や英国では「価値観に合わない者は入れない」という政治的言説が広がっています。
しかし、どれほど国境を強化しても、ひとつだけ解決できない問題があります。
それが――送還不能問題です。
1.送還不能問題は“日本だけ”の問題ではない
本来、退去強制が確定すれば本国へ送還されます。
しかし実際には、
・本国政府が受け入れを拒否する
・国籍確認ができない
・内戦や迫害の危険がある
・外交関係が不安定
といった理由で、送還できない人々が世界中に存在します。
これは一国の制度設計の問題ではありません。
国際社会全体の構造問題です。
私はブログでもこの点を指摘しましたが、送還不能問題は「制度の穴」ではなく、国際秩序の限界が可視化された現象だと考えています。
2.強制か、放置か。その二択ではない
多くの国では、送還できない人々に対して
・長期収容
・仮放免
・曖昧な法的地位
といった不安定な状態が続きます。
ここで議論はすぐに二極化します。
「厳格に排除すべきだ」
「人道的に全面受け入れすべきだ」
しかし、均衡共生モデルはこの二項対立を取りません。
秩序なき受け入れも、無期限の排除も、どちらも社会を不安定化させるからです。
必要なのは、
「秩序」と「尊厳」を同時に守る設計です。
3.地球の一員としての責務
国家は主権を持ちます。
しかし同時に、私たちは国境を越えた人類社会の一員でもあります。
難民条約、拷問禁止条約、各種人権規範は、
「国家の判断が絶対ではない」という国際的合意の積み重ねです。
送還不能問題を「国内の厄介事」として処理する発想から、
「地球規模の未解決課題への貢献」として再定義できないか。
日本は人口減少局面にあります。
将来、外国人比率が10%を超える社会になる可能性も指摘されています。
そのとき問われるのは、
・何人受け入れるか
ではなく
・どう設計するか
です。
4.実務の現場から見える不整合
私は日々、在留申請取次の現場にいます。
制度は精緻に見えても、実務では多くの不整合が存在します。
例えば、
・3か月の非該当活動は取消対象
・しかし、みなし再入国の出国可能期間は1年
制度趣旨と運用が完全には一致していない場面もある。
この小さな歪みが積み重なると、
「制度への不信」へとつながります。
排外主義は、制度への不信が土壌になります。
だからこそ、
法の厳格化だけではなく、制度の整合性と透明性が重要なのです。
5.均衡共生モデルの立ち位置
均衡共生モデルは、理想論ではありません。
・無制限受け入れを否定する
・同時に、単純排除も否定する
・責任と権利をセットで設計する
・社会統合コストを可視化する
・国際責務を制度内に組み込む
これが基本骨格です。
送還不能問題を例にすれば、
・一定期間後の法的地位整理
・就労・納税を前提とした条件付き安定化
・本国との外交的枠組み強化
・国際的負担分担の制度化
こうした具体策の組み合わせが必要です。
6.分断の時代に、冷静な設計を
ネットやテレビの言説は刺激的です。
「奪われる」「危険だ」という言葉は拡散します。
しかし、実体験に基づかない集団評価は、社会を歪めます。
私は、評価は実体験に基づくべきだと考えています。
そして実体験に基づくとき、
外国人の多くは、働き、税を納め、家族を養う普通の人々です。
均衡共生モデルは、感情の政治ではなく、
制度の政治を志向します。