各種報道(在留資格「経営・管理」日本語能力の要件追加へ 地域との摩擦を緩和 2025-9-11 朝日新聞)にあるとおり、在留資格「経営・管理」の要件が厳格化される見通しで、なんとその施行時期は10月半ばだといいます。そこで気になるのが、既に「経営・管理」で在留している人々への影響です。施行後最初に来る在留期間更新許可申請において、資本金が3000万に満たないからといってまさか一律不許可になるとは考えづらいですが、一体どのような運用になるのでしょうか。

以下、報道・関係情報をもとに、「既に在留資格『経営・管理』を持っている人」が、10月半ばの改正後の最初の更新申請でどういう影響を受けうるか、「わかっていること」「まだ不明なこと」「考えられる運用ケース」を整理します。将来どうなるか確定的ではないので、あくまで想定含み・予測という形ですが。


現時点でわかっていること

報道等から判明している改正内容のポイントと、既存資格保有人が留意すべき点を整理します。

  1. 要件の厳格化内容
    以下のような新しい要件が省令案として出されており、10月中旬施行が目標とされています。
    • 資本金要件が現行の500万円から 3,000万円以上 に引き上げ。
    • 常勤職員の雇用(少なくとも1名以上)が義務化。
    • 審査で「事業の実態・安定性・継続性」がより厳格に、客観的な証明を求める資料が増える可能性。
  2. 施行時期
    改正案は意見募集中で、省令改正案として準備が進められており、2025年10月中旬の施行を目指しているとされています。
  3. 既存保有人への遡及的適用は見込まれていないという見方
    専門家・法律事務所などの解説で、「新制度は新規取得だけでなく更新にも適用されることになるが、改正前に取得した在留資格を持っている人に対して、改正前の基準を満たしていないからといって即座に資格取消や強制帰国になるような遡及的運用は考えにくい、という見方が多いです。
  4. 更新申請時の基準適用
    施行後(10月中旬以降)には、更新申請の際に新しい要件が適用される見込み。つまり、既存保有者も、更新のタイミングで資本金・雇用などの条件を改正後のルールで審査される可能性が高い。

まだ明らかでないこと/疑問点

以下は、報道・公開情報では十分に明らかになっていない点、運用で注目すべき不確定要素です。

  1. 既存の在留期間更新において「過渡的措置」が取られるかどうか
    つまり、改正直後の最初の更新では「緩めの運用」がされる可能性(たとえば資本金が3,000万円に満たないものの、実績・引き続きの雇用や売上等で代替的・補足的に評価するなど)。このような経過措置を法務省・入管庁がどの程度認めるかは未定です。
  2. どの程度の実績・補足証明があれば許可されるか
    資本金以外の条件(売上、利益、雇用の維持、納税・社会保険加入等)の状況、過去の実績などがどのように評価されるか。たとえば、資本金3000万円未満でも、過去複数年の決算が黒字、社会保険も従業員も十分であれば「経営の安定性」が認められるかどうか。
  3. 「資本金」の定義と計算方法
    • 資本金が払込済みであることが必要か
    • 関係会社等からの融資または出資の形態(借入 vs 出資)をどう扱うか
    • 資本金以外の投資・設備・運転資金などの計上をどこまで認めるか
  4. 雇用要件の詳細
    • 常勤職員1名という要件が、どのような契約形態・社会保険の加入状況・労働時間等をどの程度求めるか
    • その職員が日本人・永住者等である必要があるかどうか
  5. 更新期間の付与期間
    更新の際に付与される在留期間の長さ(1年・3年・5年など)が、新要件を満たすと見なされる事業についてはどう変更されるか。例えば、資本金が十分でない/新要件を満たしていない事業者には、短い期間のみ更新が認められる可能性など。
  6. 不許可となる具体的ケース
    たとえば、資本金が3000万円未満、雇用なし、会社設立したばかりで売上等実績が乏しい等の場合、どう審査されるか。あるいは、赤字経営を続けている場合どの程度影響するか。
  7. 法的な救済・意義申立ての機会
    不許可になった場合、補足資料提出で再審査を求めるチャンス/再申請できるか、またそれを入管庁がどのように扱うか。

考えられる運用ケース/シナリオ

既存の「経営・管理」を持っていて、10月中旬の改正後、最初の更新申請をする場合に予想されるパターンを、いくつか具体的に考えてみます。

ケース状況の例可能な判断・結果リスク/対策
ケース A:改正前の要件+十分な実績がある人資本金500万円以上、常勤職員あり、決算が黒字、売上・利益とも安定、社会保険加入も完備している人更新時に新要件(資本金3000万円 etc.)を満たさなくても、過去の実績・継続性を重視し、「暫定的な緩和」措置または「代替資料での補填」を認めて更新許可となる可能性あり提出資料を準備。過去何年間の財務書類、雇用状況、納税実績などを揃える。申請時期を早めて改正前に更新できないか検討。専門家のアドバイスを受ける。
ケース B:資本金は500万円前後だが、雇用・実績に問題あり資本金500万円、常勤職員なし、売上少ない、赤字が続いている、未だ社会保険加入が不十分新要件を満たさないため、更新が却下または短期間在留しか認められない可能性が高い可能であれば資本金を増資する、雇用を確保する、社会保険加入など実態を強める。更新申請前に準備を整える。
ケース C:資本金は3000万円以上だがその他の要件に不足がある人資本金は十分だが、雇用が常勤でなかったり、社会保険未加入、過去の決算が赤字または不明瞭資本金要件はクリアしていても、審査でそのほかの要件(雇用、安定性・継続性)が認められなければ、更新が認められないか、あるいは短期間のみ許可される可能性雇用・社会保険等の整備、決算書等で過去の実績を明確にする。可能なら増員・雇用契約の整備、帳簿・取引実績を整える。
ケース D:小規模スタートアップ・設立直後の人創業後間もない、資本金500万円未満、従業員なし、売上等実績なし更新がかなり厳しくなる見込み。不許可或いは在留期間が非常に短くなる可能性が高い可能なら駆け込みで改正前に更新申請をする。あるいは新制度下に適応できるよう資本準備や補填要件を満たす準備をする。スタートアップビザ等の他制度を検討。

私見:総合的な予測

  • 改正後、既存保有人が最初の更新申請を行う際には、資本金が3,000万円未満であっても即時「更新不許可」とはならない可能性が比較的高い。なぜなら、制度変更に伴う移行期間・経過措置を設けるのが行政慣行だからである。
  • ただし、移行措置がどれほど寛大かによって個々の結果は大きく異なる。つまり、実績(黒字・納税・雇用・社会保険加入等)がしっかりしている人にはある程度の「寛容さ」が見られるかもしれないが、条件がぎりぎり・不十分な人には厳しい審査になることが予想される。
  • 資本金・雇用等の新要件を満たしていない事業者にとって、更新申請前の準備が重要となる。例えば、資本金の増資、雇用の確保(契約形態・就労形態・社会保険加入等)、決算書や事業実績の整備・証明可能な形の帳簿、納税証明などをそろえることが鍵。
  • 改正後、更新の許可期間(例:1年・3年・5年など)の付与において、新要件をクリアしているかどうかがより大きな要因になる。要件を満たしている場合は比較的長期の更新期間を得られる可能性、満たしていない場合は短期間更新になることも考えられる。
  • 最悪の場合、条件があまりにも不足していると判断されたら、不許可となる可能性も否定できないが、それは「補填余地なし・改善の見込みなし」の場合など、かなり厳しいケースに限定されるだろう。

在留・入管関連ニュース

投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。