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内務省、アフガニスタンの女性​​活動家に対する亡命拒否を撤回(2025-06-12 The Guardian)の記事を以下に要約します。

アフガニスタンで女性の人権擁護活動を行い命の危険にさらされていた女性「ミナ(仮名)」が、イギリス政府(内務省)から難民認定を受け、英国に留まることが許可された。

当初、内務省は「タリバンからの迫害の危険はない」としてミナの亡命申請を却下していたが、弁護士が控訴を準備する中、内務省は方針を転換し、正式に難民認定を通知した。

ミナは「長い間悲しみに暮れていたが、ようやく自由を手に入れた。これは何百万人ものアフガン女性から奪われた自由だ」と喜びを語った。

彼女の弁護士であるジェイミー・ベル氏は「ミナのような人が最初に申請を却下されたのは信じがたい」と述べ、内務大臣に対し「すべてのアフガン女性に亡命権を認めるべきだ」と訴えた。

アフガニスタン人への難民認定率は2023年末には98.5%だったが、2024年末には36%に急落。控訴件数も2022年の77件から2024年には3,293件に急増している。

ベル氏は「認定率が下がっても送還はされない。英国はタリバン政権を承認しておらず、送還協定もない。その結果、多くの人が何年も働けず不安定な状態で待たされる」と警鐘を鳴らす。

また別の事例では、アフガニスタンで女性への暴力防止活動をしていた女性にもビザが発給され、渡英が許可された。

現在の国際情勢において、難民として認定されやすい出身国には一定の傾向が存在します。難民認定は1951年の「難民の地位に関する条約(難民条約)」および1967年の議定書に基づいて行われており、迫害の恐れがある人物を保護するための国際的枠組みです。その中で、特定の国の出身者が他国で難民認定を受けやすいのは、その国の政治的・宗教的・人種的状況、あるいは武力紛争の激しさが深く関係しています。本稿では、現在難民認定が比較的されやすい国々を国際的な傾向から考察し、最後に日本の状況についても言及します。


難民として認定されやすい出身国

1. アフガニスタン

アフガニスタンは長年にわたり世界最大の難民供給国の一つです。旧ソ連の侵攻(1979年)以降、内戦と政治的混乱、タリバンの台頭、そして2021年のアメリカ軍撤退後のタリバン政権復活など、継続的な不安定さが続いています。特に女性、ジャーナリスト、人権活動家、旧政権に協力した人々は、タリバンからの迫害を恐れ難民申請をするケースが多く、欧州やカナダ、米国ではこれらの事情が考慮されやすく、認定率も比較的高くなっています。

2. シリア

2011年の「アラブの春」に端を発する内戦以降、シリアは難民の大規模な発生源となっています。アサド政権と反体制派、さらにはISなど複数の勢力が入り乱れる内戦構造は市民の安全を脅かし、空爆・化学兵器・誘拐・拷問などの人権侵害が頻発しています。欧州諸国は当初、特に2015年以降の「難民危機」に際してシリア人に対して積極的に保護を行い、多くのシリア難民を受け入れてきました。ドイツやスウェーデンではシリア人の認定率が90%を超える時期もありました。

3. ウクライナ

2022年2月のロシアによる軍事侵攻により、多くのウクライナ市民が避難を余儀なくされました。ウクライナ人の多くは「難民」としてではなく、「一時的保護措置」の形で受け入れられているケースが多いですが、戦争状態が長引く中で、難民としての認定を求める動きも見られます。欧州連合(EU)は迅速な避難と滞在許可を可能とする枠組みを整備し、前例のない速さと規模でウクライナ避難民を受け入れました。

4. エリトリア

エリトリアでは、一党独裁体制が長年続き、徴兵制度が事実上の無期限であることから、兵役忌避者や脱走兵が国外へ逃れ、難民申請をするケースが目立ちます。国連などの国際機関も、エリトリア政府による人権侵害を批判しており、欧州では同国出身者の認定率が高い傾向にあります。

5. イラン

イランでは、政治的・宗教的な理由で迫害を受けるリスクがある人々が多く存在します。特に反政府運動の関係者、クルド人、バハイ教徒、女性活動家などが国外に逃れて難民申請を行うケースが増えています。2022年のマフサ・アミニ氏の死亡を契機とした全国規模の抗議運動とその後の弾圧により、イランからの亡命者が増加しました。西側諸国では、これらの背景を考慮し、一定の認定率を示しています。


難民認定に影響する要素

難民としての認定の可否は、単に出身国によって決まるわけではありません。以下の要素が大きく影響します:

  • 個別事情の証明力:同じ国出身であっても、どのような迫害を受けたか、証拠や証言がどれだけ詳細に提示できるかが重要です。
  • 受け入れ国の政策:難民申請者をどう扱うかは各国の内政にも大きく依存します。政治的理由、社会的反発、移民政策の変化などが影響します。
  • 国際的圧力と報道:国際的な注目が高まっている人道危機では、先進国が政治的なメッセージをこめて高い認定率を示すことがあります(例:シリアやウクライナ)。

日本の難民認定の現状と課題

日本は難民条約の締約国であり、形式上は難民の受け入れ体制を整えているものの、実際には世界でも最も難民認定率の低い国の一つです。たとえば、2022年には3,772人が難民申請を行った中で、認定されたのはわずか202人(認定率:約5.4%)にとどまりました。これは他の先進国と比較すると著しく低い数値です。

このような低認定率の背景には、以下の要因が挙げられます:

  • 厳格な審査基準:日本の法務省は「個別具体的な迫害の証明」を非常に厳しく求める傾向があります。本人がどれだけ「恐怖」を抱いていても、それが制度上「客観的」かつ「構造的」な迫害として認められなければ難民とは見なされません。
  • 経済目的の申請とみなす傾向:東南アジアやアフリカからの申請者に対しては、就労目的と見なされ、却下されることが少なくありません。
  • 手続きの長期化と不透明性:審査には数か月から数年を要することもあり、その間の生活支援も限定的です。
  • 収容問題:申請中の外国人が長期間入管施設に収容されるケースも多く、人権問題として国際的にも批判されています。

しかし、最近では世界的な情勢の変化や国内の人権意識の高まり、国連からの勧告などを受け、日本政府も部分的な見直しを進めています。特にアフガニスタンやウクライナからの避難者については「準難民」としての受け入れを拡大する方向性が見られます。また、「補完的保護制度」という新しい枠組みを設け、難民条約の定義には該当しなくても人道的な理由で庇護を必要とする人々に対して保護を提供する道が広がりつつあります。


おわりに

現代において、難民問題は人道的な課題であると同時に、各国の内政、外交、移民政策の複雑な交差点にあります。アフガニスタン、シリア、ウクライナ、イランなど、迫害の恐れが現実的な国からの申請者に対しては、国際社会が適切な保護を提供することが求められます。一方、日本のような先進国がより積極的に受け入れ制度の整備を進め、真に保護が必要な人々に対して人道的な対応をとることは、国際的な信頼や責任を果たす上でも重要です。難民保護は、単に「数」や「制度」の問題ではなく、人間の尊厳と命に直結する課題であることを忘れてはなりません。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。