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「常識が通用しない相手におびえている」自民片山氏 外国人民泊問題で法規制見直し求める(2025/6/10 産経新聞)の記事を以下に要約します。
自民党の片山さつき参院決算委員長は、9日の委員会で外国人による民泊を巡る問題を取り上げ、中国人オーナーによる家賃の大幅値上げや住民の退去が相次ぐ事例を紹介し、外国人による住宅用不動産購入に対する法規制の見直しを求めた。
東京都板橋区では、中国籍の人物が購入したマンションで家賃が相場の2~3倍に引き上げられ、住民の約3割が退去。高齢女性に対してはエレベーターの停止で追い出しを図ったとの報道もあった。区長は国による対応を要請している。
片山氏は「日本の弱い国民が非常識な強硬手段におびえている」とし、入国管理や不動産制度の抜本的見直しを主張。石破首相も「国民の安全・安心が損なわれてはならない」として、対策を徹底する意向を示した。
違法民泊とは、法令に違反した形で行われる民泊営業を指し、日本国内ではここ数年、特に都市部や観光地で問題視されるケースが増えています。違法民泊の「違法性」は、単なる営業許可の未取得にとどまらず、建築基準法や消防法、治安、住民の生活環境など多岐にわたる法規制や社会的影響を無視して運営されていることにあります。以下に違法民泊の何が問題で、どのような点が「違法」とされるのかを、法的枠組みを中心に解説します。
1. 違法民泊の定義と背景
「民泊」とは、旅館業法に基づき、個人が住宅などを活用して宿泊サービスを提供する事業を指します。2018年には住宅宿泊事業法(いわゆる「民泊新法」)が施行され、民泊の合法的な枠組みが整備されました。しかし、実際にはこの法律や関連法に違反して営業している「違法民泊」が後を絶ちません。
特に都市部では、外国人観光客の増加や不動産投資目的により、住宅やマンションの一室が無許可で宿泊施設として使われるケースが頻発しています。これが「違法民泊」と呼ばれるものです。
2. 違法性の主なポイント
(1)旅館業法違反
もっとも基本的な違反は、旅館業法(旅館業を営むには許可が必要)に違反していることです。旅館業法では、不特定多数の者を宿泊させる行為は「宿泊業」として分類され、所管の保健所からの営業許可が必要です。
無許可で宿泊させれば、「無許可営業」として違法行為となり、行政指導や罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となります。
(2)住宅宿泊事業法違反
2018年の民泊新法では、事前に都道府県に「住宅宿泊事業者」としての届け出を行い、年間宿泊日数の上限(最大180日)などの条件を守ることで、旅館業法の許可なしに営業可能としました。
しかし、多くの違法民泊はこの届出すら行っておらず、民泊新法にすら準拠していないのです。また、届出をしていたとしても、営業日数を超えて営業するなどの違反も横行しています。
(3)建築基準法・消防法違反
本来、宿泊施設は不特定多数の人の出入りを想定して設計されるべきですが、違法民泊の多くは一般の住宅や共同住宅をそのまま使用しており、避難経路の確保や火災報知器、消火設備の設置などが基準に満たないケースが少なくありません。
また、マンションで民泊を行うには建築基準法上の用途変更が必要になる場合もありますが、それを怠って無許可で運営するケースも多く、非常に危険です。
(4)マンション管理規約違反
分譲マンションでは、住民の生活環境を守るために管理組合が「民泊禁止」を明記していることが多いです。しかし、こうした規約を無視して民泊を行うことは、私法上の契約違反にあたり、住民トラブルや訴訟の原因にもなります。
また、オーナーが民泊用に物件を取得し、住民を追い出すような強硬手段に出ることもあり、社会的にも問題視されています。
(5)在留資格や不法就労との関連
外国人が日本で民泊事業を営む場合、「経営・管理」などの適切な在留資格が必要です。しかし、留学や短期滞在ビザで民泊経営を行うことは不法就労に該当する可能性があり、入管法違反となります。
最近では、民泊経営を口実に在留資格を取得し、不正に滞在し続けるケースが増えており、政府は取り締まり強化の方針を打ち出しています。
3. 社会的・地域的影響
違法民泊は単なる法律違反にとどまらず、地域社会に深刻な影響を及ぼしています。
- 騒音やゴミの放置などによる近隣住民とのトラブル
- セキュリティの低下や不審者の出入りによる不安
- 不動産価格や家賃の高騰による住民の退去
- 地元自治体の対応困難による行政の負担
特に住民を追い出すために家賃を相場の2~3倍に引き上げたり、エレベーターを止めるなどの嫌がらせが行われている事例(東京都板橋区のケースなど)は、深刻な人権侵害と受け止められ、政府や地方自治体の介入が求められています。
4. 法制度の課題と今後の対応
現行制度では、旅館業法・民泊新法・入管法など個別法で対応しているものの、複数の法律が絡むため、自治体や住民だけでは対応しきれないのが実情です。加えて、外国人による住宅用不動産の取得に関する規制が不十分である点も課題とされています。
政府は現在、以下の対応を検討・実施中です:
- 内閣官房に新組織を設立し、違法民泊の取り締まりを強化
- 民泊を口実とした在留資格取得への厳格審査
- 不動産購入に関する法制度の見直し(とくに外国人による住宅用物件)
- 住民が安心して暮らせる環境の確保を最優先に
まとめ
違法民泊の「違法性」は、旅館業法違反にとどまらず、建築基準法や消防法、住民との契約違反、さらには入管法違反や人権問題にまで及びます。適切な制度の枠組みを無視して運営されるこれらの民泊は、地域社会の秩序と住民の安全を脅かす存在となっており、国としての対策が急務です。
今後は、外国人の不動産取得の実態も含めた法制度の抜本的見直しや、自治体との連携による監視・指導の強化が求められています。民泊の健全な発展のためにも、「違法」と「適法」の線引きを明確にし、透明性の高い運用が必要とされているのです。