「中国人副学長と博士留学生にリスク調査を」自民・佐藤正久氏、政府に技術流出防止訴え(2025/4/12 産経新聞)にて取り上げられているとおり、近年、外国人留学生による研究成果の流出リスクが先進国で深刻な問題となっています。特に中国との関係が注目されており、各国は技術流出防止策を強化しています。以下に、先進国の事例を交えてこの問題を考察します。
1. 日本における技術流出リスク
日本では、産業技術総合研究所(産総研)の主任研究員が中国に先端技術を漏洩した事例が報告されています。このような事案は、研究機関や大学が外国企業と共同研究を行う際に、技術情報が不正に持ち出されるリスクを示しています。また、留学生や研究員が帰国時に無断で研究データを持ち出すケースもあります。これらの問題に対処するため、データの暗号化やアクセス制限、秘密保持契約の強化などの対策が求められています。
2. アメリカ合衆国の対応
アメリカでは、政府説明責任局(GAO)が中国などの懸念国からの技術移転リスクに関する調査を実施しました。調査によると、STEM分野の大学院生の約3分の1が中国籍であり、その一部は機密データにアクセスできる立場にあります。しかし、移民・関税執行局(ICE)のデータは不完全であり、リスク評価のための追加データの収集が必要とされています。また、連邦政府の研究資金を受けている研究者が外国の機関から資金提供を受けていた場合、虚偽の申告があったとして解雇される事例も報告されています。
3. ドイツとオランダの対応
ドイツとオランダでは、中国の「千人計画」などを通じて外国人研究者が先端技術を持ち帰るリスクが懸念されています。これらの国々は、留学生や研究者の受け入れに際して、出身国や所属機関の情報を詳細に確認し、技術流出のリスクを最小限に抑えるための審査を強化しています。また、研究成果の公開や特許の申請に関しても、慎重な対応が求められています。
4. 日本の対応策
日本政府は、外国からの研究資金の受け入れに際して、研究者に対して外国の資金提供者を開示する義務を課す方針を示しています。これは、中国の「千人計画」などを通じて先端技術が流出するリスクを防ぐための措置です。また、大学や研究機関においては、留学生や外国人研究者の受け入れに際して、出身国や所属機関の情報の確認や、研究成果の公開に関するガイドラインの策定が進められています。
5. 今後の課題と展望
技術流出リスクを防ぐためには、各国の政府、大学、研究機関が連携し、情報共有と監視体制の強化が必要です。また、研究者に対する教育や啓発活動を通じて、秘密保持の重要性を認識させることも重要です。さらに、国際的な枠組みを構築し、技術流出に関するルールやガイドラインを整備することが求められます。
以上のように、外国人留学生による研究成果の流出リスクは先進国共通の課題であり、各国が対策を講じています。日本も他国の事例を参考にしながら、適切な対応策を検討・実施することが求められます。