1. はじめに

NZYQ集団のメンバー3人のうち有罪判決を受けた殺人犯、労働党との合意に基づきナウルに再定住へ (The Guardian 2025/2/15)に、オーストラリアの不法移民を第三国(ナウル)に定住させる措置が記載されています。

世界各国において、不法移民や難民の流入は政治・経済・社会問題として重要な課題となっています。その中で、受け入れ国が不法移民を第三国に定住させる制度が、移民管理政策の一環として採用されることがあります。本稿では、主要な国々における制度や具体的な事例を紹介し、その背景や課題について考察します。

2. 各国の第三国定住制度

2.1. オーストラリアの「オフショア処理政策」

オーストラリアは、1990年代以降、不法入国者を国内で受け入れるのではなく、第三国に移送する「オフショア処理政策(Offshore Processing Policy)」を実施しています。特に2012年以降、オーストラリア政府はパプアニューギニアのマヌス島やナウルに移民収容センターを設置し、オーストラリアに到着した不法移民をこれらの国に移送しました。

この制度の目的は、不法移民を阻止し、人身売買を防ぐことでした。しかし、収容施設の環境が劣悪であり、国際人権団体や国連から強い批判を受けました。2021年、オーストラリア政府はマヌス島のセンターを閉鎖しましたが、ナウルとの契約は継続しており、現在も移民の一部が送還されています。

2.2. アメリカの「メキシコ残留政策(Remain in Mexico)」

アメリカは、トランプ政権下の2019年に「メキシコ残留政策(Migrant Protection Protocols, MPP)」を導入し、中米からの不法移民申請者をメキシコに送り返す制度を実施しました。これにより、亡命申請中の移民はアメリカ国内ではなくメキシコで待機することを余儀なくされました。

バイデン政権は2021年にこの政策を撤廃しようといたしましたが、司法の判断により一時的に復活し、2022年に最終的に終了いたしました。しかし、不法移民の処遇に関する問題は依然として議論の対象となっています。

2.3. イギリスの「ルワンダ移送計画」

イギリス政府は2022年、イギリスに不法入国した移民をルワンダに移送し、同国で亡命申請を行わせる「ルワンダ移送計画(Rwanda Asylum Plan)」を発表しました。これは、欧州への不法移民の抑止を目的としており、イギリス政府はルワンダ政府と協定を結び、移民の定住費用を負担することとなりました。

しかし、この計画は人権団体や政治家から批判を受け、移民の人権侵害の可能性が指摘されました。さらに、2023年にはイギリスの最高裁判所が同政策を違法と判断し、実施が困難な状況となっています。

3. 第三国定住政策の背景と課題

不法移民の第三国定住制度は、移民を受け入れる国の負担を軽減し、国境管理を強化する手段として導入されています。しかし、以下のような課題が存在します。

3.1. 人道的問題

第三国に送還される移民は、送還先の国で十分な生活環境や人権保護が保証されない場合が多くあります。例えば、オーストラリアのナウル移送では、収容施設内での暴力や医療不足が問題視されました。

3.2. 受け入れ国との関係

移民を受け入れる第三国にとっても、社会的・経済的な負担が大きいといえます。特に経済基盤の弱い国では、移民の生活支援が十分に行えない場合があり、国際的な摩擦を引き起こす可能性があります。

3.3. 法的問題

移民の送還が国際法や国内法に違反していないかが争点となります。イギリスのルワンダ計画が裁判で違法と判断されたように、法的な課題をクリアすることが重要となります。

4. まとめ

不法移民の第三国定住制度は、一部の国において移民管理の手段として活用されていますが、人道的・法的・国際関係上の課題が多いといえるでしょう。国際社会としては、移民の権利を尊重しつつ、適切な受け入れ政策を模索する必要があります。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。