2024/12/4のブログ記事で、特定技能に関して審査日数の長期化が見込まれ、出入国管理庁(入管庁)がオンライン申請を勧めていることについて述べました。

オンラインシステムは、入管庁の審査業務の効率化に寄与しますが、我々利用者にとって審査日数が短くなるメリットは約束されていません。(むしろ遅くなるという都市伝説もあったり、多くの担当官と話す中で、まだオンラインに慣れていない方々も多くいらっしゃいます。)

それでも、弊事務所は、全てオンラインで申請を行っています。オンラインのメリットとは何でしょうか。

1.オンラインのメリット

1-1.全国対応が可能

これは少しトリッキーですが、全国対応というのは、申請人がどこにいても対応が可能という意味ではなく、申請先となる、管轄の地方入国管理局がどこにあっても対応が可能ということです。

申請人(外国人の方)の住居地(予定地含む)によって、各申請を提出する地方入国管理局は決まります。(北海道の会社に就職するのに、東京の入国管理局に提出はできない)

ですので、従来、紙でしか申請できなかった時代は、例えば関東圏を中心に仕事をする行政書士は、関東圏で就職/暮らす方々のみに対応していました。(もちろん交通費を頂ければ出張しますが)

在留申請オンラインシステムでは、申請人の住居地(予定地)に従って、管轄の入国管理局は自動的に決まります。申請の際、どこの入管に出すかは意識する必要がないのです。

このことにより、我々行政書士は、お客様の住居地・勤務地がどこであろうと申請の取次を行うことが可能となりました。

行政書士目線では、このことが最大のメリットです。

1-2.添付資料をパッケージ化できる

申請を行う際、手続によっては膨大な添付資料を提出する必要があります。在留申請オンラインシステムは、申請項目をひととおり入力した後、顔写真と添付資料をアップロードします。この添付資料は、1つのPDFファイルである必要があり、ここにいろいろな資料を合体させます。

この合体させることが手間に思われたり、なんで複数ファイルアップロードできないんだと不平が出そうですが、1つのPDFファイルにまとめるルールは、後々のために大変有益です。

入国審査のために

これは「在留資格認定証明書交付申請」に限った話です。

空港等における入国審査では、査証(ビザ)とパスポートを提示し、在留資格が示された証印をもらうと同時に、在留カードが発行されます。(査証は在外日本大使館でその発給申請を行う際に、在留資格認定証明書を提示することが必要)

入国する際は、パスポート(と査証)のみならず、在留資格認定証明書も提示する必要があります。

これに加え、”念のため”申請時に提出した申請資料も携行し、入国審査官から求められたら提示できるようにしておいた方がよいので、従来私のクライアントには、そう勧めています。

これが紙の申請であると膨大にわたり荷物になってしまったり、探すのが大変だったりしますが、1つのPDFになっていれば、スマートフォンに手軽に保存しておくことができます。

次回申請の参考資料として

例えば、在留期間更新許可申請を依頼された場合、我々行政書士は前回にどのような内容の申請を行ったかを知りたいケースが多々あります。(例えば、在留期間中に転職があった場合に、転職があっても行う活動内容は変わっていないので、更新を許可してください、と申請するが、もともとの仕事内容をどう申請していたかを知りたい。整合性がとれない申請内容は虚偽申請を疑われる。)

このとき、前回申請内容が、一つのPDFにおさまっていれば、容易に内容を把握することができます。

ちなみに、弊事務所では、理由書からはじまる書類群に目次をつけて添付資料を1つのPDFにまとめ、申請入力内容をホームページから出力したファイルとともに依頼人に提供しています。(残念なことに、前回どんな内容で申請をしたかを理解していない外国人が本当に多いです。)

1-3.郵便代・交通費等の節約

例えば在留資格認定証明書を申請する際、それ自体を郵送で送ることはできませんが、追加資料をリクエストされた際、オンラインでアップロードが可能です。(郵便料金も上がりました。簡易書留で追加書類を送ったりするのもコストがかかります。)

当然、紙による提出の場合は地方入国管理局に直接出向く必要があり、交通費等が発生します。

オンラインであれば、これらのコストが発生しません。

1-4.審査状況をオンラインで確認(?)

入管庁が言っていることがこれですが、冒頭記載のブログ記事で述べたとおり、状況を知りたい期間(今日の標準処理期間は60-70日)のほとんどが”審査中”であり、それ以上のことはわからないので、利用者にとってのメリットがどれだけあるかは疑問です。

2.留意事項

デメリットというわけではないですが、オンラインで行う際に留意しておくべき事柄がいくつかあります。

2-1.不交付/不許可の際は地方入国管理局に出向く必要あり

申請が不幸にも失敗(証明書の不交付や許可申請の結果が不許可となること)した場合に、再申請するためには、その理由を知る必要があります。送付される不交付/不許可通知には簡単なことしか書かれておらず、本当の理由は電話では教えてくれません。これはオンライン申請であっても同様です。

従って全てのケースがオンラインで完結するわけではないことを留意すべきです。

2-2.就労資格証明書の交付は今でも紙のみ

「在留資格証明書」は電子メールで発行されるようになり、我々行政書士がわざわざ国際郵便で外国に転送する手間は無くなりました。ところが、「就労資格証明書」は従来どおり紙での発行しかありません。申請はオンラインでできますが、発行自体は従来のままです。

3.まとめ

在留申請オンラインシステムには私も最初はとまどったものですが、最近はずいぶんと慣れてきました。審査業務が全体的に効率化され、審査日数の短縮が実現されることを望みます。(でも、特定技能や新制度「育成就労」における外国人労働者の増加スピードを考えると望み薄かと思う。。)

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。