産経新聞の記事「ビザなし訪日客に事前審査、不法滞在者〝居座り〟防ぐ 補正予算案で調査費計上へ」(2024/11/25)によれば、”観光などの短期滞在ビザ(査証)が免除される外国人観光客の入国可否を渡航前に前倒しして審査する制度の調査費を、法務省が令和6年度補正予算案に計上することが25日、関係者への取材で分かった。”とのこと。”制度は、米国がテロ対策などを目的に導入した電子渡航認証制度「ESTA」をもとに日本版ESTA(JESTA=ジェスタ)と仮称。12年までの導入を目指す。”と続きます。
ESTAとは?(AI先生の説明)
以下に、ESTA(電子渡航認証システム)導入の背景、目的、およびその効果について詳しく述べます。
1. 背景
ESTA(Electronic System for Travel Authorization)は、アメリカ合衆国が2008年に導入した電子渡航認証システムで、主にビザ免除プログラム(Visa Waiver Program, VWP)対象国からの渡航者を管理する目的で運用されています。その導入の背景には、2001年9月11日の同時多発テロ事件以降、国家安全保障に対する意識の高まりと、渡航者情報を事前に把握する必要性が挙げられます。
アメリカは、従来からビザ免除プログラムにより多くの国と自由な往来を可能としていましたが、テロリズムの脅威が増大する中で、入国管理におけるセキュリティ強化が急務となりました。特に、事前に渡航者の詳細情報を収集・分析し、潜在的な脅威を未然に防ぐための仕組みが求められたのです。
ESTAは、VWP対象国の渡航者がアメリカに入国する前にオンラインで簡易な情報を申請するシステムとして設計されました。これにより、アメリカ入国時のリスク管理を向上させつつ、ビザ免除という基本的な枠組みを維持することが可能となったのです。
2. 目的
ESTAの主な目的は以下の通りです。
(1) 国家安全保障の強化
テロリズムや犯罪を未然に防ぐため、渡航者情報を事前に収集し分析することで、潜在的なリスクを早期に特定します。これにより、危険人物がアメリカ国内に入国する可能性を大幅に低減させています。
(2) 入国手続きの効率化
従来、VWP対象国からの渡航者は、空港や港での入国審査において追加の審査が必要でしたが、ESTA導入により事前申請された情報を活用することで、審査が迅速かつスムーズに行えるようになりました。これにより、アメリカ国内の空港の混雑を緩和し、渡航者にとってもストレスの少ない体験が提供されています。
(3) 国際関係の維持
ビザ免除プログラムは、アメリカと対象国との間で築かれた信頼関係に基づいており、観光やビジネスを通じた経済的な利益を双方にもたらします。ESTAは、セキュリティと利便性のバランスを保ちながら、これらの関係を維持・強化する役割を果たしています。
(4) 渡航者情報のデジタル化
従来の紙ベースの入国管理手続きと比較して、ESTAの導入により渡航者情報がデジタル化され、データの保存や分析が容易になりました。このデータは他国との情報共有や、さらなるセキュリティ施策の立案にも活用されています。
3. 効果
ESTAの導入により、多くの実用的な効果が確認されています。
(1) セキュリティの向上
ESTAでは、渡航者が事前にオンラインでパスポート情報や滞在予定を申告する必要があります。この情報はアメリカ国土安全保障省(DHS)によって精査され、潜在的にリスクがあると判断された渡航者に対しては渡航許可が下りません。この仕組みにより、テロリストや犯罪者がアメリカに入国するリスクを効果的に抑制しています。
(2) 渡航者の利便性向上
ビザ取得に比べて手続きが簡単で、申請はオンライン上で数分程度で完了します。また、ESTAの許可は2年間有効であり、その間に複数回の渡航が可能です。この利便性は、観光客やビジネス渡航者にとって大きなメリットとなっています。
(3) 経済的効果
ESTAの導入により、アメリカは観光やビジネス目的の渡航者を引き続き受け入れることが可能となり、観光産業や関連経済分野への影響が最小限に抑えられました。入国管理が厳格化されても、VWP対象国の渡航者が容易に入国できるため、観光収入や国際ビジネスの推進に貢献しています。
(4) 情報活用の促進
ESTAを通じて収集されたデータは、犯罪捜査や国際テロ対策の分野でも役立っています。渡航者情報のデジタル化により、各種システムとの連携が進み、効率的なセキュリティ管理が可能となっています。また、同様のシステムは他国でも導入され、国際的な協力の一環として機能しています。
(5) 入国管理の柔軟性
ESTAは、ビザ免除プログラムの枠組みを維持しながら、セキュリティを強化する柔軟な対応策として評価されています。これにより、アメリカは安全性を保ちながら、自由な国際交流を続けることが可能となりました。
4. 課題と今後の展望
一方で、ESTAにはいくつかの課題も指摘されています。例えば、システムへの依存度が高まることでサイバーセキュリティの脆弱性が懸念されます。また、一部の渡航者にはオンライン申請が困難な場合もあり、これらの障壁を低減する取り組みが必要です。
今後は、AIやビッグデータ解析を活用したさらなるリスク評価の高度化や、他国との情報共有強化が期待されています。また、世界的な渡航管理システムの一環として、ESTAの成功事例が他国にも波及していく可能性があります。
以上のように、ESTAは国家安全保障と国際交流の促進を両立するための重要なツールとして機能しており、現代の入国管理におけるモデルケースといえます。
JESTA導入の真の目的
ピンポイントにクルド人対策と考えます。約20年前のイラン人が大量に来日・就労した問題は、短期滞在の査証免除措置を凍結(現在も凍結中)することで解決したことは、当ブログの記事でも述べました。
一方、今話題となっているクルド人はトルコ国籍を有しています。少数民族に過ぎないクルド人のためにトルコ全体を査証免除から外す(或いは措置の凍結)ことはできません。
このため、出国前の事前審査で止める事が有効になるのです。(こちらの記事でも述べています。)
追記
全てのクルド人の方々が、難民認定制度を濫用している訳ではありません。(なお、最近の入管法改正で退去強制が適用されなくなる難民認定は原則2回まで(従来は制限が無かったので濫用が見られた)となったが、1回の難民認定自体におよそ5年かかるので、単純計算で2回で10年となり、これで濫用防止になっているかは疑問)
ただ、制度に抜け穴があったり、取り締まりが緩いことで、不法入国や不法残留が発生します。そして、不法残留状態の外国籍の方が日本で子供を生んだが自らは退去強制となる等、この事が家族の分断のきっかけとなりうるのです。
適切な水際チェックが、その後の悲劇を防ぐことにつながります。