不法入国し前科ありのクルド人、強制退去に「すぐにまた来る」「私は金持ち」 病院乱闘事件で逮捕されたのに再入国 (2024/07/01 デイリー新潮)に、「2013年に不法入国しました。すぐに退去命令が出ましたが、それに従わず、1年後に難民申請を行いました。その2年後に不認定となった後には暴行容疑、さらにその後、器物破損容疑で逮捕されています」とありますが、入管法上の意味合いからすると、”不法入国して退去命令”という概念はありません。
入管法における、”不法入国”、”不法上陸”、”退去命令”、”退去強制手続”という言葉の定義を理解しておく必要があります。
不法入国と不法上陸
二つの言葉の定義は以下のようになります。
不法入国 | パスポートや査証(※)を保持することなく、日本の領空・領海に入ること ※査証免除国を除く。 |
不法上陸 | パスポートや査証を持っていようがいまいが、上陸審査を受けることなく、日本の陸地に入ること。 |
上陸審査の結果、上陸を拒否されるケースは、不法入国でも不法上陸でもありません。「退去命令」が出され本国に送還されます。
この意味で、冒頭記事のいう、”不法入国して退去命令”という概念は成り立たないのです。当該外国人は、上陸拒否事由に該当し、上陸を拒否され、退去命令を受けたということであり、違法行為ではありません。
なお、パスポート、査証を持たずして”上陸”した場合は、”不法上陸”ではなく、”不法入国”という扱いになります。
退去命令と退去強制(令書の発布)
似た言葉として、退去命令と退去強制がありますが、入管法上の意味合いは以下になります。
退去命令 | あくまで、”上陸審査”の結果として、上陸を拒否された結果、発せられるもの |
退去強制 | 広く、我が国に上陸・残留している外国人が退去強制事由(不法上陸や在留資格と取消された場合等)に該当している場合に適用される”手続” 手続の中では、退去強制令書の発布が、実際の命令行為にあたる。 |
退去強制手続により出国した外国人は、強制された日から5年間は日本に上陸することはできません(退去強制手続を受けたこと自体が上陸拒否事由にあたるため)が、退去命令の場合はこのような制限はありません。(ただ、退去命令を受けた上陸拒否事由を払拭しないと当然次回も上陸を拒否されます。)