1 すべての起点は「雇用」である

外国人の生活インフラを考えるとき、その中心にあるのは雇用である。

銀行口座は給与振込に依存する。
住宅契約は収入の安定性に依存する。
在留資格は就労内容に依存する。

つまり、

雇用はすべてのインフラの起点である。

しかし現実には、

この最も重要な「雇用」が、制度として分断されている。


2 在留資格は本来「雇用情報」と不可分である

多くの在留資格は、

「どのような仕事を、どの条件で行うか」

によって成立している。

例えば、

技術・人文知識・国際業務
特定技能
経営・管理

といった在留資格は、
業務内容や雇用条件と密接に結びついている。

それにもかかわらず、

・企業 → 雇用契約
・入管 → 在留資格審査
・銀行 → 収入確認

がそれぞれ独立して存在している。


3 現場では「ズレ」が常態化している

この分断構造により、

実務の現場ではさまざまなズレが生じている。

・在留資格と実際の業務内容の乖離
・転職時の情報断絶
・副業や業務変更の不透明性
・企業側の確認負担

これらはすべて、

雇用情報がリアルタイムで共有されていないこと

に起因する。


4 問題の本質は「静的審査」である

現在の在留資格制度は、

申請時点の情報に基づいて判断される。

つまり、

「静的な審査」

である。

しかし実際の雇用は、

・昇給
・配置転換
・転職
・副業

といった変化を伴う。

この動的な現実に対して、
制度は追いついていない。


5 RegTechによる解決仮説

この問題は、

雇用情報を基軸としたデータ接続により
大きく改善できる可能性がある。


仮説① 雇用契約データのAPI化

企業が持つ雇用情報を、

・職務内容
・雇用形態
・給与水準

といった形でデータ化し、
安全に連携可能とする。


仮説② 在留資格との自動整合チェック

雇用データと在留資格の範囲を照合し、

・適法性の確認
・逸脱の検知

を自動化する。


仮説③ 変更時のリアルタイム通知

転職や契約変更があった場合、

・入管
・企業
・関連機関

に通知される仕組み。


6 企業にとってのメリット

この仕組みが実現すれば、

企業は

・在留資格確認の負担軽減
・コンプライアンスリスクの低減
・人材活用の柔軟化

を実現できる。

特に、

外国人雇用に不安を持つ企業にとっては、
参入障壁を大きく下げる効果がある。


7 金融・住宅への波及

雇用情報が安定的に取得できれば、

銀行は収入の裏付けを確認できる。
不動産は信用評価を高度化できる。

つまり、

雇用RegTechは他のインフラを接続するハブになる。


8 なぜ実現していないのか

このような仕組みが存在しない理由は、

技術ではなく制度にある。

・雇用情報は企業内に閉じている
・在留資格は行政に閉じている
・両者を接続する制度が存在しない

その結果、

人手による確認と書類提出に依存する構造が続いている。


9 個人情報管理への懸念と設計の方向性

雇用情報や在留資格を連携させる議論においては、

「個人情報を国に管理されるのではないか」

という懸念が必ず生じる。

この懸念は正当であり、軽視すべきではない。

しかし重要なのは、

現在でもすでに

・在留資格 → 入管が管理
・雇用情報 → 企業が管理
・所得情報 → 税務当局が管理
・金融情報 → 銀行が管理

という形で、

個人情報は分散して存在している

という点である。


10 問題は「集中」ではなく「断絶」である

現状の問題は、

国家による過度な集中管理ではなく、

情報が分断されていること

にある。

その結果、

・同じ情報を何度も提出させられる
・不正や逸脱が見えにくい
・責任の所在が曖昧

といった非効率とリスクが生じている。


11 RegTechの設計原則

したがって目指すべきは、

中央集権的な統合ではなく、

分散連携型の設計である。

例えば、

・データは各主体が保持する
・本人同意に基づき必要最小限を参照する
・利用履歴を可視化する
・目的外利用を制限する

といった原則である。


12 信頼インフラとしてのRegTech

このような仕組みが実現すれば、

それは監視の強化ではなく、

透明性に基づく信頼インフラ

として機能する。

結果として、

・企業は安心して雇用できる
・金融機関は適切にリスク評価できる
・外国人本人の負担が軽減される

という三者にとってのメリットが生まれる。


13 次回予告

第5回では、

デジタルID × RegTech

を扱う。

在留資格
雇用
金融
住宅

これらを統合する基盤は構築可能なのか。

移民インフラの「統合レイヤー」に迫る。


まとめ

問題は、

国が情報を持つことではない。

問題は、

誰も全体を安全に確認できないことである。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。