イギリス政府は、国境管理と不法就労防止を目的に、2029年までに全市民・居住者を対象としたデジタルID制度を導入する方針を発表しました。(UK plans compulsory digital ID as populist pressure over immigration rises ALJAZEERA
2025-09-27)このデジタルIDはスマートフォン上の「デジタルウォレット」に格納され、氏名、生年月日、国籍、在留資格などの個人情報が含まれます。特に就労権の証明が義務化される点が大きな特徴です。しかし、自由民主党や改革UK党などからは、監視社会化やデジタル排除、データ流出リスクを懸念する声も上がっています。また、現金取引主体の職場などでは不法就労抑止に効果があるか疑問視されています。
日本の在留カードとの比較
日本の在留カード(Zairyūカード)は2012年に導入され、外国人の在留管理のために生体情報や在留資格を記載した物理カードです。在留カードは就労確認のために必ず提示が求められるわけではなく、スマホのデジタルウォレットと連動していません。つまり、両者は外国人管理という目的は共通していますが、イギリスのデジタルIDはデジタル経済や就労確認に直接結びつく点でより統合的なシステムです。
世界における外国人・市民のデジタルIDの潮流
近年、デジタルID制度は世界的に進展しています。
- エストニア:国民向けにデジタルIDを提供し、行政サービスや電子署名の利用を安全に実現。
- インド:Aadhaar制度により住民に一意のID番号を付与し、行政・金融・社会保障サービスへのアクセスを簡素化。
- 欧州連合(EU):eIDASフレームワークにより、市民・企業向けデジタルIDウォレットの導入を2026年までに義務化。
これらのシステムは行政サービスや経済活動の効率化、安全性向上を狙う一方で、プライバシーやデータ保護の問題も指摘されています。
結論
日本の在留カードは外国人の在留管理を中心に設計されており、デジタル化や就労確認には限定的です。一方、イギリスのデジタルIDは就労権の確認やデジタル経済への統合を重視しており、より包括的なデジタル管理システムです。これは、世界的に進むデジタルID化の流れを反映しており、各国は利便性とセキュリティ、プライバシー保護のバランスを模索しています。
日本の制度はデジタルID化の面ではやや遅れている印象がありますが、今後の世界的な潮流を踏まえれば、外国人や市民のデジタル個人識別管理の強化は不可避と言えるでしょう。