外国人犯罪統計は大量移民の愚かさを証明している (The Telegraph 2025/01/06)が述べるように、移民の犯罪率が自国民のそれより高いことを問題視する論調は、内外で見られます。

グローバル化の進展や労働力不足の解消を目的として、日本は近年多くの外国人労働者や留学生を受け入れています。しかし、在留外国人の増加に伴い、外国人による犯罪が注目されることが増えています。特にメディアや一部の世論では、外国人の犯罪率が日本人より高いという見解が見受けられます。一方で、データに基づいた冷静な分析では、その見方に疑問を呈する意見もあります。本稿では、在留外国人の犯罪率が日本人より高いという主張について、肯定的・否定的な立場から検討します。

1. 外国人の犯罪率が日本人より高いという肯定的立場

(1) 統計データにおける外国人犯罪の割合

警察庁が発表する犯罪統計では、外国人による犯罪が一定の割合を占めていることが示されています。特に窃盗、詐欺、薬物犯罪といった特定の犯罪分野では、外国人の検挙件数が比較的高いとされています。たとえば、特定技能制度や技能実習制度の拡大に伴い、労働環境に不満を持つ一部の外国人が窃盗や暴力事件に関与するケースが報告されています。

(2) 組織的犯罪の関与

外国人犯罪の中には、組織的な犯罪集団が関与しているケースも存在します。例えば、偽造在留カードの製造や不法滞在者の斡旋、薬物密売といった犯罪には、海外の犯罪組織が関与していることが指摘されています。これにより、特定の外国人コミュニティが犯罪の温床になりうるという懸念が生まれます。

(3) 文化や価値観の違い

文化や価値観の違いが、法律や社会規範に対する理解不足を生み、結果として犯罪に繋がる可能性があります。たとえば、労働契約や生活ルールに対する認識の違いがトラブルを引き起こし、暴力沙汰や窃盗といった問題行動に発展することがあります。特に、日本語能力が低い外国人は、法的なルールを十分に理解できず、知らず知らずのうちに法律を犯してしまう場合もあります。

(4) 不法滞在と不法就労

在留資格が失効した後も不法滞在を続ける外国人が、生活費を稼ぐために違法な手段に頼ることがあります。特に、不法就労や売春、薬物の売買などの犯罪行為は、経済的困窮や孤立によって助長されることがあります。このような状況は、外国人の犯罪率を押し上げている要因の一つと考えられます。

2. 外国人の犯罪率が日本人より高いという見解への否定的立場

(1) 実際の犯罪率は低い

警察庁の統計データを冷静に分析すると、外国人全体の犯罪率は決して高くはありません。むしろ、在留外国人の人口比を考慮すると、日本人と比較して犯罪率は同等か、むしろ低い傾向にあるとするデータも存在します。外国人犯罪が注目されるのは、メディアによる過度な報道や印象操作が影響している可能性があります。特定の事件だけが強調され、実態よりも過剰に外国人犯罪が多いと誤解されるケースが少なくありません。

(2) 検挙率の高さが偏見を助長

外国人は、言語や文化の違いから目立ちやすく、警察の取り締まりの対象になりやすい傾向があります。その結果、実際には日本人と同じ行動をしていても、外国人の方が検挙されやすいという現象が生じています。このようなバイアスが、外国人の犯罪率が高いという誤解を助長している可能性があります。

(3) 犯罪の質と量の区別が不明確

外国人が関与する犯罪は、単純な交通違反や軽犯罪が多く、重大犯罪に関与する割合は低いのが実態です。しかし、メディアでは重大事件が取り上げられることが多いため、外国人犯罪=重大犯罪というイメージが先行しています。実際には、日本人の犯罪の方が件数・内容ともに深刻なものが多いにもかかわらず、外国人犯罪のみが強調されがちです。

(4) 社会的要因と労働環境の問題

外国人労働者や留学生が関与する犯罪の背景には、劣悪な労働環境や社会的孤立といった要因があります。技能実習制度では、過酷な労働条件や賃金未払いが問題視されており、これが犯罪行為の引き金になるケースもあります。これは、外国人個人の資質の問題ではなく、日本社会側の受け入れ体制やサポートの不足に起因するものです。

(5) 外国人コミュニティの自浄作用

多くの外国人コミュニティは、地域社会と良好な関係を築き、犯罪防止に積極的に取り組んでいます。自国の評判を守るために、コミュニティ内でルールを設けたり、犯罪防止活動を行ったりするケースも少なくありません。このような取り組みは、犯罪の抑制に一定の効果を上げていると考えられます。

3. 結論

在留外国人の犯罪率が日本人より高いという主張には、肯定・否定の両方の意見が存在します。肯定的な立場では、統計データや組織犯罪への関与、文化的ギャップを根拠としています。一方、否定的な立場では、人口比や検挙率の偏り、社会的要因の存在を挙げ、実態とは異なる印象が先行していると主張します。

重要なのは、数字や報道だけで判断せず、背景や構造的な問題を総合的に捉えることです。犯罪の防止には、外国人の受け入れ体制や社会統合支援の充実が不可欠です。公平で偏りのない視点から、外国人と日本人が共に安心して暮らせる社会の実現が求められます。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。