ハフポスト日本版(2024/11/14)によれば、”警視庁の警察官に、同意なしに氏名や住所の個人情報をトラブルの相手に提供され、帰宅の意思を示したが警察署内で長時間にわたって事情聴取されるなど違法な対応を受けたとして、(中略)原告側は、警察官たちによる一連の行為が人種差別を支持・助長するものであり、「異常なまでの圧迫的な扱いはレイシャル・プロファイリングに当たる」と指摘。「公権力の行使に際して人種差別を行ってはならないという職務上の注意義務に違反し、違法だ」として、損害賠償を求めていた”とのこと。

日本におけるレイシャル・プロファイリングの実例

レイシャル・プロファイリングとは、人種や国籍に基づいて特定の集団を不当に取り締まったり、差別的な扱いをすることを指します。日本では、特に外国人に対するレイシャル・プロファイリングが指摘されています。例えば、警察が「不審者」に対して職務質問を行う際に、外国人や特定の見た目を持つ人々を重点的に対象とするケースがあります。これにより、外国人が頻繁に職務質問を受けたり、場合によっては不当な捜査を受けたりすることが多々あります。

また、入国管理局での扱いにも問題が指摘されています。空港やその他の出入国管理の場で、外国人旅行者が日本人と比較して入念なチェックを受ける傾向があり、場合によっては不審者扱いされることもあります。さらに、日本在住の外国人やハーフの子どもたちが、学校や地域社会で差別を受けることもあり、彼らが「日本人」として受け入れられない感覚を抱く要因にもなっています。

実際、2019年には、関西国際空港で韓国籍の男性が、他の韓国人旅行者とともに不当な職務質問を受けたとして、日本の警察を訴えた事件がありました。この事件は、日本国内外で大きな注目を集め、日本の警察による外国人に対する偏見や差別の実態を浮き彫りにしました。また、東京ではナイジェリア系の男性が頻繁に職務質問を受けるという事例があり、このような外国人への扱いが日常化している現実もあります。

今後必要な取組

まず第一に、法的な対策が必要です。現在、日本ではレイシャル・プロファイリングを明確に禁止する法律がありません。他国と比べても、日本の人種差別に対する法整備は不十分であり、そのため外国人が差別的な扱いを受けた際に適切な救済措置が取れないことが問題となっています。したがって、日本政府はレイシャル・プロファイリングを禁止する明確な法律を制定し、人種や国籍に基づく差別的な取り扱いを厳格に規制することが重要です。

次に、教育と意識啓発が必要です。日本社会には、外国人に対する偏見やステレオタイプが根強く残っています。これを解消するためには、小学校から高校、さらには大学で人種問題や多様性についての教育を強化することが求められます。また、警察や入国管理局の職員に対しても、外国人を不当に扱わないようにするためのトレーニングが必要です。特に、外国人が増加する観光業界において、外国人を理解し、適切に対応するためのガイドラインを設けることで、社会全体の意識を変えていくことができます。

さらに、コミュニティの交流促進も必要です。多文化共生を目指す上で、外国人と日本人の間にある壁を取り除くための取り組みが求められます。例えば、地域での交流イベントや、多国籍の住民が集う場を提供することにより、お互いの文化を理解し、親しみを持つことができるでしょう。また、外国人のコミュニティに日本語教育や生活支援を行うことも、彼らが地域社会に溶け込むための助けとなります。

最後に、社会の透明性と公正性を確保するために、警察の職務質問や入国管理の実態を記録・公開し、透明性を高めるべきです。これにより、外国人が不当に扱われていないかどうかの監視が可能となり、法的措置が取られる際にも根拠となります。警察や入国管理局の行動に対する監視体制を強化し、差別的な取り扱いが発覚した場合には厳格に対応する体制を整えることで、より公正な社会を築くことができます。

結論

日本におけるレイシャル・プロファイリングは、外国人への偏見や差別的な取り扱いを助長し、社会における平等と公正さを損なう問題です。日本が真の多文化共生社会を実現するためには、法整備、教育と意識啓発、コミュニティの交流促進、透明性の向上が不可欠です。これらの取り組みにより、日本社会はより多様で包摂的な未来を目指すことができるでしょう。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。