私のもとには、在留資格の変更や更新に関する相談が日々寄せられています。
「次の契約先を決めたいのですが問題ありませんか」「このままで更新できますか」といった不安の声です。

お話を丁寧に伺っていくと、多くの場合、問題は単純ではありません。
前の会社で受けた扱いがずさんであったり、法の趣旨を十分に理解しないまま運用されていたりするケースが少なくないのです。

ご本人はまじめに働き、税金も納めています。
それでも、雇用契約の内容、社会保険の加入状況、勤務実態の記録などに不備があると、在留手続きの場面で一気に不安が噴き出します。

ここに、制度の断絶があります。


入管制度だけでは解決できません

在留資格の審査は厳格です。
しかし、在留制度は社会の一部にすぎません。

労働法、税務、社会保険、企業法務。
それぞれが別々の制度として存在し、別々に運用されています。

企業側の労務管理が不適切であれば、その影響は在留手続きに波及します。
形式だけを整えるブローカーが介在すれば、後になって矛盾が表面化します。

入管が本気になれば、通報報奨制度などに頼らなくても摘発の余地はあるはずです。
しかし、問題の核心は摘発件数ではありません。

制度同士が十分につながっていないこと、それ自体が本質的な問題なのです。


悪意は一つの場所にあるわけではありません

企業に明確な悪意がある場合もあります。
一方で、企業は無知であっても、違法を煽るブローカーと組み合わさることで、結果的に悪意が構成されてしまうこともあります。

誰か一人の問題ではありません。
複数の分野がまたがることで、不適正が構造的に生まれます。

そして最終的に不安定になるのは、外国人本人の在留状況です。

責任は分野横断的に存在しています。
しかし制度は縦割りです。

このねじれを放置したまま、共生を語ることはできません。


厳しいか、緩いかの問題ではありません

例えば、在留資格に該当しない活動が三か月を超えれば、取消しの対象になり得ます。
一方で、みなし再入国の出国可能期間は一年です。

この差は何を意味しているのでしょうか。

厳格さと柔軟性が混在していること自体が問題なのではありません。
重要なのは、その違いが説明可能であるかどうかです。

制度は、合理的でなければ信頼されません。
均衡とは、単に厳しくすることではありません。
整合性を確保することです。


数だけでは、構造は変わりません

外国人労働者の数を制限すれば問題が解決する、という議論があります。
AIが代替すれば受け入れは不要だ、という声もあります。

しかし、現場で見ているのは“数”ではありません。
一人ひとりの生活です。

労働は統計の単位ではなく、地域社会の一部です。
数量管理だけでは、制度の断絶は埋まりません。


均衡とは、接続のことです

均衡共生モデルは、排除と無制限受け入れの中間を探す思想ではありません。

均衡とは、制度をつなぐことです。

入管と労働行政。
税務と社会保障。
企業責任と本人責任。

それぞれを分断したままでは、共生は理念にとどまります。

制度がつながれば、責任の所在は明確になります。
制度がつながれば、不安は減ります。

私は日々の相談を通じて、その断絶と可能性の両方を見ています。

共生は感情ではありません。
構造です。

制度を横断して設計し直すこと。
それが、均衡共生モデルの核心だと私は考えています。

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投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。