―議論の劣化と私たちの選択―

世界の政治は、いま「排除」を競う方向へと傾いています。

移民を制限する。
国境を強化する。
「価値観に合わない者は入れない」と宣言する。

強い言葉は拍手を集めます。
しかし、それは本当に問題を解決しているのでしょうか。


1.排除は“政策”ではなく“感情”である

排除型の言説には共通点があります。

・治安悪化の原因を外国人に帰す
・社会保障の負担を外国人のせいにする
・文化の変容を「侵食」と表現する

しかし、こうした主張の多くは、統計や制度の精査よりも、印象や恐怖に依拠しています。

問題は、感情そのものではありません。
問題は、それが制度設計に直結してしまうことです。

制度は冷静でなければなりません。
制度は、継続可能でなければなりません。
制度は、国益と人権の両立を前提に設計されるべきです。


2.「ゼロ」にしても消えない問題

仮に、外国人の受け入れを極限まで減らしたとします。

それで、

・送還不能問題は消えるでしょうか
・不法滞在はゼロになるでしょうか
・労働力不足は解決するでしょうか

答えは、いずれも否です。

送還不能問題は、国際法と外交関係の構造問題です。
労働力不足は、人口減少という人口動態の問題です。
不法滞在は、制度の複雑さと情報格差の問題です。

排除は、構造問題を隠すことはできても、解決はしません。


3.議論が「質」から「量」に劣化する

近年の議論は、
「何人受け入れるか」
「何%減らすか」
といった数量の話に偏りがちです。

しかし、本当に問うべきはそこでしょうか。

・どのように社会参加を支えるのか
・どのように地域と結びつけるのか
・どのように法運用の透明性を高めるのか

数は結果であって、目的ではありません。

数量だけを操作する発想は、
共生の設計を放棄する発想でもあります。


4.均衡共生モデルの立ち位置

均衡共生モデルは、
「無制限受け入れ」でもなければ、
「全面排除」でもありません。

それは、

・法の厳格な運用
・透明性のある審査基準
・社会統合への責任
・地域社会との接点づくり
・国益との整合性

を同時に満たそうとする設計思想です。

感情ではなく構造を見る。
単年度ではなく世代単位で考える。
政治的拍手ではなく、社会の安定を優先する。

これが均衡共生モデルの基本姿勢です。


5.私たちはどこへ向かうのか

日本の在留外国人はすでに約400万人に達しています。
これは一時的現象ではありません。

人口減少が続く限り、
国際移動が存在する限り、
この問題は“終わる”ことはありません。

だからこそ、

排除か受容か、という二択ではなく、
どう設計するか、という問いに移行する必要があります。

強い言葉は社会を分断します。
精緻な制度は社会を安定させます。


結びに

均衡共生モデルは、理想論ではありません。
日々の入管実務の中で感じる矛盾、
制度運用の不整合、
そして現場で努力する外国人と地域社会の姿――

それらを土台に構築する、実務から生まれた設計思想です。

世界が排除へと傾く今だからこそ、
日本は「制度で応える国」であるべきだと、私は考えています。

次回は、
「法運用の透明性と信頼の再構築」
について掘り下げます。

投稿者: kenjin

行政書士の西山健二と申します。 外国人の方々が日本で働き、暮らすために必要な在留資格の各種申請手続を支援します。